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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第84回

~『SHOE DOG』(フィル・ナイト著)を読んで学んだこと~

 

ダメ男たちのサクセスストーリー

 

本書はナイキの創業者であるフィル・ナイト氏が書いた自伝記です。なぜ本書を買ったのかはよく覚えていません。本書の存在は知りませんでしたし、友人知人から教えられた記憶もありません。一番可能性が高いのは、アマゾンで別の本を買った際に、オススメの書として出てきたのだと思います。

フィル・ナイト氏のことも知らなかったので、当然、彼がかの有名なナイキの創業者であったことも知りませんでした。ナイトという苗字の人がいるんだと思ったくらいです。そのうえ、タイトルが日本語に直訳すると「靴の犬」となっており、なんのことだかさっぱりわかりませんでした。恐らく、衝動買いだったと思いますが、運がよかったです。

本が届いてさらに驚きました。何がって?本の分厚さが!
アマゾンの表示上は単行本となっていましたが、本書のページ数は548ページにもおよぶため、単行本というよりは、辞書みたいな厚みです。読み終えて改めて思いましたが、本書は、フィル・ナイトという人の辞書です。

何せこの分厚さですので、正直言って、読み始めるまでかなりの時間を要しました。もちろん、本の内容をすべて読む必要はありませんが、途中で断念してしまう可能性が高かったからです。

ところが、本格的に読み始めてからは、もっと早く読み始めていればよかったのにと後悔しました。本書の内容は、さながら司馬遼太郎の歴史小説を読むがごとくであり、強烈なキャラクターが次々と現れ(あえて誇張して際立たせているのでしょうが)、また(ナイキの)歴史を揺るがす大事件が次々と発生し、目を離す隙がありません。

ともかく、本書もすべての内容を紹介したい本の一つですが、特に重要な2ヶ所を以下に引用します。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/秋-霧-フォレスト-木の幹-離れた-道路-ルート-道-風景-3193305/

 

【この本のポイント!】

 

夜明け アスリート人生

(中略)オレゴンの人間が世間に誇れるものがあるとするなら、それはこの地に至るまで切り開いてきた古い、古い街道だ。だがその後、劇的なことは今にいたるまで何も起こっていない。
これまで出会った中で最高の先生、素晴らしい男性の1人が、その街道のことを何かにつけて語っていた。それは私たちが受け継いだものだと、先生は力説していた。それは私たちの特性、宿命、DNAであると。「臆病者が何かを始めたためしはなく、弱者は途中で息絶え、残ったのは私たちだけだ」と彼は言うのだった。
私たち。開拓者精神を受け継いだ一部の者だけが、その道の途中で見出されると先生は信じていた。悲観的な考えを寄せ付けず、可能性を強く信じる者だけが生き残る。そしてその血筋を受け継ぎ、残していくのは私たちオレゴン人の仕事だと。(後略)

『SHOE DOG』P1~P8

 

フィリピン

(中略)アレクサンダー大王からジョージ・パットンまで、私は偉大なる将軍に惹かれる。戦争は嫌いだが、闘いの精神は好きだった。武器は嫌いだが、侍は大好きだった。そして歴史上の闘将の中で最も惹かれたのはマッカーサーだ。レイバンのサングラスにコーンパイプでおなじみの彼は、自信に溢れていた。優れた戦術家で指導者であり、アメリカのオリンピック委員会の長にもなった。彼を愛さない理由などないだろう。
もちろん、彼にも大きな欠点があったが、本人はそれを自覚していた。予言めいたこんな言葉を残している。「ルールを守ったことでなく、ルールを破ったことが人々の記憶に残る」(後略)

『SHOE DOG』P42~P43

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/足-履物-ナイキ-靴-スニーカー-ホワイト-1840619/

 

本書を最初から最後まで読むとわかりますが、

「臆病者が何かを始めたためしはなく、弱者は途中で息絶え、残ったのは私たちだけだ」
「ルールを守ったことでなく、ルールを破ったことが人々の記憶に残る」

この2つの言葉は本書の中で繰り返し出てきます。
主人公のフィル・ナイトが困難な状況に陥るたびに、まるで呪文を唱えるように出てきます。つまり、この2つは彼の人生に最も影響を与えた言葉であり、彼の人生を貫く哲学のようなものなのでしょう。

本書を読んでいて感じるのは、普通なら隠したくなるような失敗談がふんだんに盛り込まれているということです。著者もその周りの人たちも本書を書いた頃には歳を重ねており、いまさら格好つけたところで仕方がないと思っているのかもしれません。また、時間もかなり経っているで、本書で出てくる数多くのカミングアウトもほぼ問題にならないということでしょう。

冒頭でも書きましたが、本書は司馬遼太郎の歴史小説のような面白さがあります。彼の小説は、歴史的事実に立脚しつつも、重要なキャラクターの個性を際立たせたり、時折架空の人物を登場させ、それを上手に活用して話を面白くするという手法だと理解しています。このようにして、歴史という結果がわかっているネタバレの小説であっても、読み手に対してハラハラドキドキする展開を提供することで、読み手を物語の中に引き込んでいくのだと思います。

本書の場合は、架空の人物はいないと思いますが、ナイキの前身となるブルーリボンは常に資金繰りの問題を抱えており、何度も黒字倒産しそうになります。少年漫画のように、何度もピンチに陥りながらも、それを乗り越えて成長していくところも、読み手に取って爽快感があるのだと思います。

ナイキは今ではスポーツ用品業界において最大手ですが、当初は日本のオニツカ(現:アシックス)からタイガーというシューズを仕入れて、アメリカで販売するところからビジネスを始めたというところにも興味を惹かれました。どのような会社であっても、最初のビジネスというのはこういうものなんだなと。

また、主人公やその経営陣たちが、自分たちの仕事は天職だと感じ、自分たちの仕事に誇りをもってひたむきに取り組んでいる姿勢も、多くの人の共感を得ている部分だと思います。フィル・ナイトが靴販売のビジネスを始めた当初は、自分の父親からでさえ、靴を売る商売はマヌケだとバカにされていました。世の中の雰囲気も同様だったのだと思いますが、彼らは不断に研究開発をし、結果を出すことで周りの認識も変えていきました。

本書はダメ男たちのサクセスストーリーですが、読む人全員を引き込み、勇気を与えてくれるような本だと感じています。みなさんもぜひ読んでみてください。

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/SHOE-DOG-シュードッグ-フィル-ナイト/dp/4492046178/ref=tmm_hrd_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=

 

参考図書:『SHOE DOG 靴にすべてを。』
発行年月:2017年11月
著者:フィル・ナイト(Phil Knight)
訳者:太田黒奉之(おおたぐろ・ともゆき)
発行元:東洋経済新報社

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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