みなさんは自分で課題設定できていますか?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第98回

~『アマゾンが描く2022年の世界』(田中道昭著)を読んで学んだこと~

 

必要なのはまだ見ぬ未来に対処する能力。

 

本書はアメリカのEC大手アマゾンドットコムに関して書かれていますが、後半はその競合とされる中国のアリババについてもかなりのページ数が割かれています。そして、アマゾンとアリババの2大巨頭に対抗する唯一の日本企業として、メルカリのことについても触れられています。

それはさておき、アマゾン、アリババ、メルカリとそれぞれの創業者に関する記述は一見の価値がありますが、今回はそれらとはあまり関係ない箇所が気になりましたので、以下に引用します。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/学生-入力-キーボード-テキスト-女性-スタートアップ-ビジネス-849825/

 

【この本のポイント!】

 

AI時代には「未来を創る力」が最も重要

AI時代においては、未来を創る力、つまりは自分で課題や問題を見つけ出して解決に導く力が必須です。しかし、現状では日本人にとって最も苦手なことといえるでしょう。
私が外資系企業に勤めていたころ、米国人の上司がいつも言っていたのは「日本人は与えられた問題を解くのは得意だが、自分で問題を設定するのは下手だ」ということでした。この上司は「日本のバブル崩壊後の長期低迷の主因は、課題設定能力不足にある」と主張していたくらい、日本人のこのスキル不足を問題視していました。
「欧米企業が設定したテーマを自らのテーマとして追いつくだけでよかった時代には、日本企業は最強であったが、自ら未来のテーマを設定しなければならない時代には、日本企業は国際社会から取り残される」と辛辣なコメントをしていたことはいまでも強烈な記憶として残っています。
実際に、日本人の多くはクリティカル(ロジカル)・シンキングを学ぶ機会が提供されていないこともあり、課題や問題の設定が不得意とされています。
クリティカル・シンキングとは批判的思考法とも呼ばれますが、現状から課題を見出し、現状を分析したうえで、解決の仮説を立て、検証し、実行することです。論理的に思考していくことも求められますが、最終的には与えられた問題を解決していくだけではなく、自ら合理性の高い問題設定や課題設定を行ない、それらの解決策を見出すことができるようにしてくのがクリティカル・シンキングなのです。(中略)
ここで最も重要なのは、クリティカル・シンキングにおいては、「論点を立てる力」と「長期の目標設定を行う能力」とが同じスキルセットであるとされていることです。実際にクリティカル・シンキングのプロセスでは、最初に目標やあるべき姿を定義し、次に何が問題であるのかを明確にし、最後に対策を考えていきます。目標やあるべき姿を定義するというプロセスは、長期の目標設定を行うプロセスと同一なのです。さらには人や組織が本当に取り組むべき課題を的確に設定していくためには、普段から問題意識を高め、大局観をもち、本質を見極める能力が不可欠です。
「自分や自分の組織においてはいま何を問いかけるべきであるか」「自分や自分の組織においてはいま何に答えをだすべきであるのか」という視点は、長期の目標設定を行う視点と同一なのです。
アマゾンにおいて仕事を通じて養われる能力とは、実は「未来を創る力」であり、「論点を立てる力」であり、そして「長期の目標設定を行なう力」なのです。そして、それらは同じスキルセットなのです。未来を創る力には、論点を立て、解決までの道筋を考える構想力、そしてそのための長期の目標設定が不可欠なのです。

『アマゾンが描く2022年の世界』P197~P200

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/計算されました-タブレット-技術-タッチ-コンピュータ-画面-820272/

 

本引用箇所を読んで図星だと思った方も少なくないと思います。いわゆる、目標は達成するまでが楽しい。トップを追いかけている間は迷いがない。という状況です。

いくつか前の読書オタクで取り上げた本田宗一郎さんの言葉ではありませんが、何事もトップを目指し、そのための努力も必要ですが、もっと大事なのはトップに立ってからです。トップに立つまでは、敷かれたレール、与えられたゲームのルールの範囲内で一所懸命にもがいているだけで、それはそれでつらい部分もありますが、目標が明確で迷いがないという強みがあります。

他方で、自分たちがトップに立った後は、その先に道しるべはありません。その先に広がっている暗闇に対して、自分でたいまつを持ち、火をつけ、後ろから来る人たちを照らしてあげる必要があります。自分一人で暗闇に突進していくことは、それはそれで勇気が要るかもしれませんが、それでは世の中に対して何も起こりません。つまり、自分で新たな目標を定め、他の目標となるような言動を心がける必要があるということです。

これからは、人間の仕事の大半はAIに奪われると言われています。

そのためには、AIとは異なる価値を人間が発揮する必要があります。現状でのAIの強みは、2位以下の状態で1位にいかに効率よく追い付くか。ということに尽きると思います。1位の状態で先を見通す能力、つまり、計算だけではどうにもならない状態で、その先を正確に見通す能力は、まだまだ人間の方が優れていると思います。問題は、この人間の強みを発揮できている人が少ないことです。多くの人は、AIでもできることに力を注いでいます。

世の中は日増しに自動化が進んでいます。どう考えても人間がやらなくてもいいという仕事、たとえば高速道路の料金所の料金徴収などは、中国では都会でもまだ一部残っていますが、完全自動化になるのは時間の問題です。地下鉄や列車の改札は日本も中国もほぼ完全自動化されています。日本では、外国人観光客が多く集まる駅では、その分の人員を券売機の説明員に割いているのは良い点です。切符を切るだけの仕事より、券売機の近くにいてあらゆるケースに対応する方がよっぽど高度な仕事です。派出所のお巡りさんのごとく、道を聞かれたり、目的地までの行き方を聞かれることも多いでしょう。こういう仕事も、ソフトバンクのペッパーに代表されるようなヒューマノイド型ロボットに置き換わる流れがありますが、まだまだ人間が活躍するべき分野だと思います。

要は、人間が対応すべき仕事は、正解がない仕事だと思います。正解がある、あるいは、正解はまだわからないけど、確実にある。というような分野は、今後AIが発達していくことで解明され、解明された後はロボットが主に担うべきです。

人間の五感、いや、第六感までもフル活用して日々過ごしていきたいところですね。

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/アマゾンが描く2022年の世界-すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」-PHPビジネス新書-田中-道昭/dp/4569837336/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1531559484&sr=1-1&keywords=%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%82%BE%E3%83%B3%E3%81%8C%E6%8F%8F%E3%81%8F2022%E5%B9%B4%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C

参考図書:『アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』
発行年月:2017年12月
著者:田中道昭(たなか・みちあき)
発行所:PHP研究所

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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