みなさんはアイデアを思いついただけで終わっていませんか?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第107回

~『人生の勝算』(前田祐二著)を読んで学んだこと~

 

アイデアだけではただの妄想です。

 

本書の著者のことは正直知りませんでしたが、彼は子供の頃から親を亡くしていろいろと苦労しているようです。小学生の頃からギターの弾き語りをやってお金を稼ぐことを覚えるなど、バイタリティーやハングリー精神が半端ないですが、本書は、彼のこれまでの人生が簡潔にまとめられており、サクッと読めます。

その中で、以下の引用箇所が気になったので今回取り上げます。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/放浪者-バックパック-ハイキング-離れた-パス-登山-455338/

 

【この本のポイント!】

 

「起業道場」DeNA

(中略)食事をしながらおもむろにiPadを取り出して、僕の持っていった事業アイデアをプレゼンしました。回答の質をある方法で担保する、クオリティ型のQ&Aサービスでした。この時点では、「僕のアイデアはどうですか?」ぐらいの軽い気持ち。
話を聞き終えた後、南場さんに言われました。

「悪くないよ。Q&A市場は日本では『知恵袋』が大きいけど、まだいくらでも新しい切り口を打ち出して勝てる可能性はある。でも、今の前田くんが起業して、必死に努力しても、うまくいく可能性は低い。なぜなら、事業を興して成功させるには、金融やコンサルにいる人たちが持たない、また別の力が必要だから」

僕は、複雑な気持ちになりました。
まず、起業プランについては、すごく自信がありました。プレゼンも十分論理的かつ情熱的に行ったつもりでした。でも、南場さんからすれば「それで?」という感じで、その南場さんに対して、成功可能性の高さを裏づけるものが何もない状態でした。
投資銀行でトップの営業マンか何か知らないけど、事業会社における経営能力や胆力、事業立ち上げに必要な泥臭いオペレーション能力は、また別のもの。マッキンゼー出身の南場さんは、自分自身もそこで苦労しているから、身をもって事業の難しさを理解しているようでした。
多少のビジネスの知識はあるかもしれないけど、経営者になる上で、「実業」の経験値が、ほとんど0だというのは、僕自身も不安ではありました。

その点を南場さんは、鋭く指摘しました。
「前田くんが考えている起業プランなんて、今この瞬間に世界中で少なくとも100人くらいの人は考えついている。だから、それ自体に、価値はないんだよ。肝はexecution。前田くんの事業は面白いかもしれないけど、大失敗して、大きな借金を抱える可能性もある。従業員の人生や、家族の日々の暮らしも、みんな犠牲になってしまう。そのリスクをカバーできる胆力があるか」
続けて南場さんから意外な提案を受けました。
「前田くん、DeNAで修行したら?」と(中略)

僕は実業においては、トライもエラーもしていません。あくまで、外野から分析して、意見を述べ、投資家という誰か別の主体に意思決定を促すような仕事。もちろん、それでマージンをいただいているわけですから、広義には立派なビジネスなのですが、南場さんの言うところの、0から1を作り出す実業とは、本質が異なっているのは自分でも認識していました。(後略)

『人生の勝算』P165~P169


画像引用元:https://pixabay.com/ja/空-自由-幸福-安心-祈り-オープンアーム-称賛-希望-平和-2667455/

 

今この瞬間に同じアイデアを考えている人は、世界中で100名はくだらない。

この言葉には共感します。実は私もこれと同じ経験をしたことがあります。

たとえば、日本ではスープカフェが流行っていますが(とはいってもブームになっているとまではいきませんが)、私もその昔まったく同じことを思いつきました。

もちろん、私はこういうのが流行るだろうなーと思っただけで、まったく行動に移していませんでしたので、後出しジャンケンみたいでズルいですし、実際に事業として行っている人には敬意を表します。しかも、これに関しては、やられたと思うよりは、やっぱり流行ったか。ということでむしろ嬉しいくらいでした。

そして、このアイデアもよくよく考えると、まったく同じことを思いついた。というのはやや誇張しています。

第一に、当時は、今日本で流行っているようなスープカフェを中国や東南アジアなど、海外で展開したら面白いなと思ったのであり、日本でやったらヒットするとはまったく考えていませんでした。

第二に、資金の問題や自分のこのアイデアに対する興味などの問題で、実際に手をつけていたわけではありません。しかも、飲食業でアルバイトをしたことはあるものの、飲食業界での経験があるわけでもありませんので、基本的にはただの妄想のレベルであったということです。

つまり、実際にさまざま壁にぶち当たって、苦難を乗り越えたうえで実現させたわけではありませんので、むしろ、同じアイデアを思いついたと言うことすら恥ずかしいレベルなのです。そもそも、当時の私は中国に住んでいたもののサラリーマンであり、自分がプロジェクトの責任者として事業を進めた経験は何回かありましたが、事業をゼロから立ち上げたり、自分でお金を稼いだり、工面したりする経験をしたことはありませんでした。

まさに、本引用箇所で著者が友人から指摘されたダメそのままの状態でした。

ですので、著者の友人の言葉はすごく心に響きましたが、一つ意見が異なるのは、やったことが無いからどこかで経験を積めというのはまっとうなアドバイスですが、基本的に新しい事業は誰もやったことが無いというか、誰も教えてくれないので手探りでやるしかありません。

どうせ立ち上げに苦労するなら、覚悟さえあれば、苦労を承知の上で歯を食いしばって自分で試行錯誤しながら進めるのも一つの方法だと思います。

とは言っても、それはケースバイケースで、一般的に、当時の著者のようにまだ若い場合、全体的な経験も少ないですし、やる気さえあれば周りもサポートしてくれますので、どこか別の会社で経験を積むという選択肢の方がよい可能性がありますが、ある程度の年齢の人なら、基本的にはアドバイスを受けつつ自分なりに試行錯誤しながらやっていく方がいいのではないでしょうか?

いずれにせよ行動あるのみ、ということを改めて思い起こさせてくれる一節でした。

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/人生の勝算-NewsPicks-Book-前田-裕二/dp/4344031369/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1536995059&sr=1-1&keywords=%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%AE%E5%8B%9D%E7%AE%97

 

参考図書:『人生の勝算』
発行年月:2017年6月
著者:前田祐二(まえだ・ゆうじ)
発行所:幻冬舎

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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