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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第120回
~『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(スコット・ギャロウェイ著)を読んで学んだこと~
ハードワークはすべての土台
私も最近になって知ったのですが、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)という現世界の四大巨大企業のことを、これらの企業名の頭文字を取って、ガーファ(GAFA)と呼ぶそうです。
このようにして、これら4社の脅威を際立たせているのですが、実際のところ、現代人でこれら4社の製品やサービスにまったくお世話になっていないという人は少数派だと思います。直接的な関りはなくとも、この4社の影響によって自社の仕事が増減したり、自分の生活が変わったりという間接的な影響を受けているはずです。
本書は辞書と言えるレベルの分厚さの本ですが、著者の語り口調がとてもユニークかつ軽快なため、ボリュームを気にせずスラスラ読めます。
私も本書のお陰で、この四騎士についての理解がとても深まりましたし、この4社が成功している理由と、その陰に埋もれている多くの企業、未来の四騎士のことまで幅広く勉強になりました。
それはそれでとても面白く、最近読んだ本の中でも特に読むべき価値がある本だと思いますが、どこを引用するかという話になると、個人的には下記が気になりました。以下に引用します。
画像引用元:https://pixabay.com/ja/ナイト-戦士-馬-兵士-戦争-戦い-軍事-歴史-男-凡例-2565957/
【この本のポイント!】
面倒を減らす
新しいアイデアを考えているとき、起業家は何を付け加えればいいか—顧客におもしろい体験をさせられるか—ばかり考える。何かを減らして面倒を取り除こうと考えることはまれだ。しかし過去10年間で大きな価値を生み出したのは、何かを減らす工夫だったと私は思う。(中略)
たしかに技術革命で爆発的に増えた価値は、新しい機能や能力によってもたらされた。しかしもっと大きな助けとなったのは、日常生活から面倒な手続きと時間のかかる作業を取り除いたことだ。
面倒はあらゆるところにある。(後略)
『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』P293~P295
あなたは起業家向きか
(中略)ここまで論じてきたように、起業家は誰にでも向いているというものではない。年ごとに起業する負担は重くなっているように思える。事実、起業家として成功するために必要な性格とスキルを持っている人は、とても少ない。そしてこれは「性格がいい」とか「頭がいい」で決まることではない。起業家として成功するために求められる性質の中には、人生のほかの面で大きな不利益になるものもある。
ではあなたが起業家タイプかどうか、どうすればわかるだろうか。
成功する起業家の条件はデジタル時代になってもそれほど変わらない。ブランドづくりより製品づくりができること。そして創業チーム内、あるいは近くに技術者を入れること。以下に3つの質問がある。
1 人前で失敗しても平気でいられるか
2 売り込みは好きか
3 大企業で働くスキルに欠けているか
大きな事業を築くスキルすべてを備えている人はたしかにいる。しかし、彼らはほとんどの場合、それをしようとしない。
それは会社に金を支払って(受け取って、ではない)週80時間働くことができないからだ。創業資金を調達することができなければ(たいていはできない。そして間違いなく高い)、資金を集めるために金を払って働く必要がある。ほとんどの人は、報酬なしで働くという考えが理解できない—99パーセント強の人々は、働く喜びのために自身の資本を賭けようとはしない。
(中略)“起業家”とは“売り込み担当者”と同義である。自分の会社に入るよう誰かに売り込む。会社にとどまるよう売り込む。投資家に売り込み、そして(忘れちゃいけない)顧客に売り込む。
(中略)起業家がやることは販売業務であり、最初の3年から5年、あるいは廃業するまで—どちらか先に実現したほう—儲けがゼロどころか持ち出しになることが続く。(中略)
(中略)逆にあなたが他人と仲よくできず、他人を信頼する能力を持たず、新しい製品やサービスについての自分のビジョンに病的なまでに執着するなら、あなたは起業するのに向いているかもしれない。
私は自分がそのタイプだと知っている。過去の雇い主候補だった人々が私を無能とみなしたため、自分で事業を始めなければならなかった。私にとって起業することは生き残るための唯一の手段であり、アメリカの大企業という歴史上もっとも偉大なプラットフォームで成功するスキルがないゆえの選択だった。(後略)
『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』P402~P407
画像引用元:https://pixabay.com/ja/技術-ラップトップ-コンピュータ-携帯電話-スマート-フォン-792181/
つまり、本引用箇所を掲載したことで特に強調したかったことは以下の2点です。
1. 世の中はどんどんシンプルになっていく
2. 起業家という存在はますます貴重になっている
まず最初ですが、最近では、0.01mmのセンサーやフレキシブルディスプレイが登場しています。
あらゆるデバイスにタッチパネルが搭載されたことで(その最たるものがスマホ)、醜い突起物(ボタンやスイッチ)が無くなりました。そして、0.01mmのセンサーやディスプレイがあらゆる製品に搭載されることで、そのタッチパネルすら不要になります。現状では、電源供給や製品の安定性などでまだまだ課題があるようですが、無線充電の技術がより進歩すれば電源の心配は減るでしょうし、安定性については、継続して開発できる環境(主に投資資金)があれば問題はないでしょう。
世の中がよりシンプルになっていくというのは、過去のパソコンや携帯と今のを見れば一目瞭然です。スーパーコンピュータは別として、パーソナルコンピュータができた当時は、画面は人の頭と同じくらいの大きさでしたし、本体もテレビ台を立てに置いたようなレベルの大きさでした。そこからノートパソコンになり、マックブックのような限界ともいえる薄さまで進化しました。ただこれも、まだ実用化されていませんが、最新の0.01mmのキーボードとタブレットの組み合わせにはかないません。このキーボードは収納するとペンとほぼ同じサイズになります。これとペアでタブレットを持ち歩けば、カフェでタブレットを立てかけて、キーボードを展開すれば、立派なノートパソコンとなります。
携帯電話も同じです。
その昔は陸軍で使う無線機か?と思うような大きなカバンと巨大な受話器がセットでした。そこから小さなプッシュ式の電話に代わり、それに折り畳み式が加わり、いわゆるフィーチャーフォン(ガラケー)と呼ばれる携帯の時代が長く続きました。この時は画面は液晶で、ボタンは液晶とは別にありました。それが、iPhoneの登場によって大きく変わります。ボタンは一つだけになり、それ以外の機能は液晶画面の中ですべて行えるようになりました。そして、今ではほとんどのスマホが表面にはボタンすら付いていません。スマホの側面に、わずかに電源や音量増減などのボタンが小さく取り付けられているだけです。
このように、世の中の大きな流れは、よりシンプルになるよう進んでいます。
次は起業家の存在です。
本引用箇所や冒頭の話に矛盾するようですが、現在空前の起業ブームというか、世の中は、起業家にとってはこれでもかというくらい起業しやすくなっています。
ただ、業を起こすことは誰にでもできますが、業を続けることは誰にでもできることではありません。
著者が起業する負担が重くなっているというのは、起業自体のハードルは、世界的に年々下がっているとは思うが、起業して食えるようになるには年々難しくなってきている。という意味だと思います。
ただ、読書オタクは起業家の一人としてこの意見には異を唱えます。
著者はシリアルアントレプレナーとして、複数の会社を興してきた経験から、起業してビジネスを軌道に乗せることの大変さを身に染みて感じているからこのように言うのだと思いますが、一方で、彼や私と同じで会社勤めに向いていない人はゴマンといます。
ですので、これからも起業家はい無くならないでしょうし、今、中国でも日本でも世界的に起業家が増えているのは一過性のブームなのかどうかはわかりませんが、私が思うに、この問題の究極的な行きつく先は、世界の全員起業家か全員サラリーマンかのどちらかの世界だと思います。
これもまた矛盾しているようですが、5Gの世界になると、ビッグデータ解析が進み、AIがより進化し、人間がこれまでに担ってきた仕事がどんどん無くなるでしょう。その時人間がどうなるかというと、ロボットにすべての仕事を奪われて仕事をする必要が無くなる一方、それによって昔ながらの古臭い仕事をする必要が無くなり、現時点では想像もつかないような新たな仕事が生まれ、それに取り組むということです。
ちなみに、ここでいう起業家とサラリーマンというのは、登記上の状態を表しているのではなく、実際の状況を表しています。
仕事が減って人員が不要になると、人員整理される人が増えます。激務に耐えかねてやめる人や病気や家庭の事情でやむを得なく辞める人もいるでしょう。この時は、無職ともいえますし、逆の見方からすれば、半ばなし崩し的にフリーランスや自営業になったとも言えます。いずれにせよ、一旦起業家か起業家予備軍の状況になったと言えます。ただ、このような状況下で新しい道を見つけられる人は、真の起業家としての道を歩んでいくのでしょうが、大半の人はそうではなく、生活するために、結局は今まで通りの仕事に従事せざるをえません。つまり、制度上は起業家でも、結局は取引先からの仕事に頼っているという状態、つまり、勤め人が上司から仕事を指示されている状態と実質何ら変わりません。これらは、自動車業界や建築業界などに顕著です。
また、大した実力があるわけでもないのに、大手企業の幹部に取り入って大きな仕事をもらったり、業界の実力者のイエスマンになることで実力以上の売上を立てたり、投資家の言いなりになったり、私からすれば、これのどこが起業家なのか?と疑問に思えるような仕事をしているなんちゃって起業家が多くいます。
それに、若い起業家が増えているのは喜ばしいことですが、起業することをナメている人が少なくないのも事実です。つまり、そういう意味での、全員起業家であり、全員サラリーマンでもあるということです。
話の収拾がつかなくなってきたので、そろそろまとめますが、真の起業家になりたければ、仕事を好きになるとかビジョンをもつとかいろいろな条件があるのでしょうが、それらの土台として、最低限、ハードワークが、そしてそれは3年や5年という短期ではなく起業家としてやっている間は一生、求められることは肝に銘じておくべきでしょう。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/four-GAFA-四騎士が創り変えた世界-スコット・ギャロウェイ/dp/4492503021/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1544845220&sr=8-1&keywords=gafa
参考図書:『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』
発行年月:2018年8月
著者:スコット・ギャロウェイ(Scott Galloway)
訳者:渡会圭子(わたらい・けいこ)
発行所:東洋経済新報社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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