人事制度不備のために負担している見えないコスト
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ELEVAGE MANAGEMENT CO.,LIMITED 谷公爾
経営コンサルタントの谷と申します。よろしくお願いします。
さて今回は「人事制度がない(不十分である)と何が困るのか?」についてお話ししようと思います。
人事制度は通常、従業員のモティベーションを維持するために、また処遇を客観的に公平に行うためにも必要な制度だと考えられているはずです。しかし、きちんと整備しようとして外部に頼むと結構なお金がかかるし、社内に専門家を置くのも大変、ということで、特に中国では人事を後回しにしてしまわれる会社も多いようです。
画像引用元:http://www.7230.com/a29168
コンサルの実感としては、よい人事政策を打てている会社と業績の良い会社は中期的に一致します。その理由を分かりやすく数字で表せないかと考えて試算してみました。試算の前提条件は、以下です。
画像引用元:http://www.venturesquare.net/538774
従業員100名、平均人件費(会社負担分)7,000元/月、労働分配率30%としました。ということは、賞与2ヶ月で計算すると人件費総額が9,800千元/人、粗利が約32,700千元/人です。仮にメーカーさんだとすると、粗利率を40%として、売上高81,700元(約13億円/年)の会社です。
① 採用ロス:従業員は不公平な処遇をする会社にはいたくありませんから、人事が不備な会社では辞める人が多くなります。そうなればまた採用しなくてはなりません。年間10人離職者がでるとして、2人しか辞めない会社と比べると毎年8人分の採用費(エージェントへの支払が3ヶ月分2万元として8人で24万元)が余計に掛かります。総経理や幹部社員の面接時間や人事の事務処理時間も考慮すると、4~500万円以上のコスト増となっています。
画像引用元: https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/22564
② 育成ロス:教育にかかる費用の話ではなく、新入社員が仕事を覚えるために必要な時間と、それを教える人の業務効率の低下のことです。それなりに仕事を覚えた社員8人が新人に入れ替わり、仮にキャッチアップに2ヶ月掛かるとすると、その間の本来のパフォーマンス(付加価値)は労働分配率の逆数で約33,000元/人月になりますので、その間の効率低下を仮に▲50%、指導担当者8人が指導のために10%の効率低下を起こすとすれば、(33,000元☓8人☓50%+33,000元☓8人☓10%)☓2ヶ月分で、31.7万元(約500万円)の逸失利益ということになります。これは直接的に残業代などの形で表面化してくることも多いロスです。
画像引用元: http://www.daiichisankyo.co.jp/recruit/career/
③ 現地化の遅れ:今、日系企業では盛んに「現地化」という声が聞かれます。が、現地人幹部がなかなか育たない、ちょっと育つと辞めてしまうという状況だと日本人駐在員を帰任させられないということが続きます。育成ができていれば日本人ひとりで済むところ、現状2人置いている会社では、1人分が過剰です。優秀なローカル幹部との差額(給与だけでなく、経費、帰省費用など諸々)は少なくとも約500万円と言われます。
画像引用元: http://irorio.jp/natsukirio/20150122/197975/
ちなみにここでの計算にはあえて含めませんが、当該日本人が駐在をやめて帰国すれば、別の然るべきポジションで、少なくとも別途2千万円くらいの付加価値は稼ぎだすはずです。これも目に見えないですが、本社側のロスとして考えておくべきものです。
④ 業務パフォーマンスの低下:全社員の優秀な上位2割は状況に関わらず高パフォーマンス、下位2割は常に発揮能力が低いと言われます。そして真ん中の6割の人材は、処遇が公平でないと感じることでテキメンにパフォーマンスを落とします。この効率ダウンは2割とも3割とも言われていますが、仮に2割だとして33,000元☓20%☓60人☓12ヶ月=475万元(7,600万円)の逸失利益となっている計算です。
画像引用元:
http://www.okwave.com/id/culturezine/psychological_analyses/78/238/id
如何でしょうか。大げさだと思いますか?人事がうまく機能していない100人規模の企業で、毎年1億円近い利益を失っているという計算です。この試算の設定では、粗利を5.2億円としておりますので、その20%が消えています。
画像引用元: http://www.braving.co.jp/service/personnel-strateg.html
さらに制度不備であることで発生確率が跳ね上がる「係争リスク」を考えると、補償金や弁護士費用、幹部陣や本社社員による対応時間、操業停止に伴う損失や顧客への賠償、諸々で、ひとたびリスクが顕在化すれば、通常3千万円から1億円くらい掛かってしまいます。特に昨今は、ストライキも頻発していますし、そこまでいかなくても、従業員が不公平な処遇として調停に訴え、会社側が負けるケースが続出しています。決して看過してよいリスクではありません。
人事がきちんとしていて、組織の雰囲気が良い、つまり従業員がはつらつと一生懸命に働いてくれている会社の業績がいいのは、こうしてみてみると当たり前のことなのですね。
以上
谷公爾
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