生産管理システムの設計(5)生産管理と製造のギャップ

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生産管理を規律正しく行うと考えれば、1ヶ月を1日単位に分解した生産計画について、1日単位で生産指示(製造への発注書)を発行し、個々の生産指示番号で、製造の各工程を追跡できる事が望ましいと考えられます。こうすれば、生産指示から完成品入庫まで、すべての工程が生産指示番号によって追跡可能(トレーサビリティーの向上)となります。
しかしながら、製造課では、1日の製造数量は生産管理課から来る生産指示に基いて決めているけれども、いま製造している「これ」がどの生産指示番号に紐付いているのかについては把握していない(できない)工場が非常に多いようです。なぜこのような事が起きるのかについて、下記の2つの図を御覧ください。

 

画像引用元:http://www.isl.hk/blog/bobby/archives/1079

 

ある客先からの注文の製造を行う為に、生産管理課では上記のように3日間の生産計画をつくり、それぞれの日に製造する予定の数量について生産指示1・2・3という番号を振って、それを製造課へ送りました。この製造ラインでは、通常の業務時間にて、1日に1000個を製造する事ができるものとします。製造課では、1日目は良品900個と不良100個、2日目に良品900個と不良100個、3日目に良品1000個と不良0個の製造を行いました。

理屈の上では、それぞれの日の製造数量と生産指示番号を紐つける事ができますが、製造が作成する生産日報には生産指示番号が無いので、システム画面の前で担当者が考えこむ事になってしまいます。

 

画像引用元:http://www.isl.hk/blog/bobby/archives/1079

 

全部の製造が終了して、生産日報が製造課の事務所へ上がってきました。そこでシステムへ入力しようとした時に、入力担当者は上記図のような状況に直面します。システム上は、3つの生産指示番号に注残がありますが、3日分の生産日報の良品数量とは一致しません。
賢い担当者なら、生産日報を古い日付順に並べて、上から順番に良品の数量をシステムの生産指示番号へ引当て行けば問題ありません。しかし、このような伝票が1日に何十枚も来て、入力する機種が何十もあるとすれば、大変面倒です。現場の規律が比較的弱い工場では、このような面倒な伝票入力を毎日毎日、担当者へ間違い無く行わせる事はなかなか困難です。
このような状況がある場合、「規律」と「現実」のバランスをある程度とりながらシステム上の入力問題を解決する「妥協案」として、下記のような方法が考えられます。

 

画像引用元:http://www.isl.hk/blog/bobby/archives/1079

 

上記の図で示したように、いままで1日単位に分割していた生産指示を、1つにまとめてしまう方法です。こうすると、生産管理課の認識(生産指示数量)と製造課の認識(製造数量)のすり合わせが容易になります。その結果、下記の図のように、システム入力時に、生産指示と製造数との引き当ても容易になります。

 

画像引用元:http://www.isl.hk/blog/bobby/archives/1079

 

しかし、上記のような運用を行う為には、システム的に注意するべき事があります。下記のシステム構成図をもう一度良く見て下さい。

 

画像引用元:http://www.isl.hk/blog/bobby/archives/1079

 

システム的には、生産指示数量と領料(倉庫から材料の引き落とし)数量が一致している事が前提となっています。ここで、3日分の生産指示を1つにまとめるだけであれば、大きな問題はありません。しかし、まとめる期間が1週間とか1ヶ月になった場合、製造の初日で全部の材料の払出しをシステム的に行ってしまう事になります。こうなると、材料が倉庫に無い場合もありますし、月末の棚卸し時の誤差も大きくなります。
もし生産指示数量を一定期間まとめる事を前提としている場合には、領料画面で、材料を1日単位で分割領料(払出し)出来るような機能的な工夫が必要になるかと思われます。

次回は、これまで述べて来た内容について、弊社のシステムを例に実際の画面について見てみましょう。

 

記事引用元:http://www.isl.hk/blog/bobby/archives/1079

 

September 25, 2014 | Posted by bobby

石水智尚 / 総経理 艾斯尔计算机技术(深圳)有限公司

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