新元号の時代は女性がより元気になる?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第136回

~『女系図でみる驚きの日本史』(大塚ひかり著)を読んで学んだこと~

 

家系図は女系で見るべし。

 

先日、新元号が「令和」と発表されました。

発表の瞬間は、今の時代らしくネットやSNSで見る人も多かったようですが、私は中国にいたので、わざわざテレビを見られるところにまで行ってテレビで見ました。

見た瞬間は、今までの元号と違って女性的だな、優雅だなという印象でした。

元号発表の一週間前くらいから、新元号が何か予想するのが流行っていたようですが、私も含めて「令和」と、予想した人はほとんどいなかったようで、多くの人にとって驚きをもって迎えられたと思います。ちなみに、私はどうせ当たらないからと、そもそもほぼ事前予想すらしていませんでした。。。

本書は初めて日本の書からの引用ということでも話題になりましたが、引用元である「万葉集」のくだんのくだりは、後漢の政治家である張衡(ちょうこう)が残した「帰田賦」の一節にも非常に似た一節が見られることから、早くもパクリ疑惑が出ています。

まぁ日本の伝統文化は外来の文化と日本古来の文化とのミックスですので、「平成」の時と同じく、漢籍と和書の両方から引用したという話にもっていけばいいんじゃないかと思いますが、それはともかく、このタイミングで本書を読んだのは非常に意義がありました。

ちょっと前置きが長くなりましたので、以下に気になった箇所を引用致します。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/vectors/家系図-系譜-系統樹-血統-295298/

 

【この本のポイント!】

 

第四講 紫式部の名前はなぜ分からないのか

平安時代の女は、かなりな「有名人」でも「名前」の分からぬ場合が多い。
紫式部、清少納言、和泉式部、赤染衛門……これら有名文学者の「名」は、女房として仕えた際の「呼び名」であって、皆、本名ではない。(中略)
武士の時代には女の地位が低下したため、公的な記録に女の名が残りにくくなったということがあるが、女の財産権が強く、地位も高かった平安貴族の場合は事情が異なる。
結論から言うと、太古からあった「実名忌避の俗信」が根強く残っていたためだ。
「実名忌避の俗信」とは、名前と人間は一体であるという考え方から、実名を知られると呪いをかけるのに利用されたり、災いを受けるなど危険であるとして、実名を秘したり、別名で呼ぶ習慣のことだ(中略)
とくに「女子は相手に実名を告げるのは、肌を許すこととすら考えられていた」(中略)
今で言うなら個人情報をさらすと、詐欺やストーキングに悪用されるから秘すといった感覚で、実名も知らぬまま、ハンドルネームで呼び合っているネット社会に似ていなくもない。

『女系図でみる驚きの日本史』P70~P71


画像引用元:https://pixabay.com/ja/vectors/家系図-家族-祖先-ツリー-297812/

 

本書の真髄はここではなく、奈良平安時代の皇族や貴族は、母親の地位が如何に重要だったか、一般的に滅んだと言われている平氏は、実は女系図で見ると滅亡どころではなく大繁栄していたこと。徳川家が天皇家や源氏の血統を取り込むために、女系の力を如何に利用したかなどが書かれており、本引用箇所はそれらからすると外れています。

要は、日本人は昔から何にも変わっていないというか、一周回ってまた昔の時代に逆戻りしたのではないかということです。戦争の時代は男が強くなりますし、平和な時代は女性が強くなります。

無論それだけではありませんが、ミーハーなところは変っていないなと。

そもそも、日本人の75%は縄文人と弥生人の混血ですし、元号は今では日本でしか残っていない風習ですが、元々は中国で始まったものですし、こうして書いている漢字は読んで字のごとく、中国製ですし(近代の漢字は日本人がヨーロッパ言語を漢字に翻訳した和製漢字を日本も中国も多用しているわけですが、それはともかく)、ひらがなとカタカナは漢字ベースです。

明治以降の近代から現在までも、ヨーロッパの文化や制度を取り入れて発展してきましたし、現在ビジネスで多用されている横文字のほとんどは英語ベースですし、これ以上書き続けるとキリがないので止めますが、結局、日本の伝統だとか文化だとか言っても、日本人自身も含めて、すべてミックスであって、もっと言えば、延々とバランスよく積み上げてきたものであって、その「バランス」も時代と共に変化してきました。

もちろん、新しいことを取り入れようとして、今まで積み上げてきたものを全部捨てるのは賛成できません。ただ、今回の新元号制定のように、新しいアプローチをすること(代替わりする前の事前決定や和書から選ぶこと)に対して、闇雲に批判するべきではないと思います。

冷静に考えれば、日本の元号なので日本由来の本から選ぶのは別に非難されるべきことではないはずです。また、コンピューターがこれだけ普及した現在において、実務上の影響も考慮すれば、一ヶ月前に国民に広く知ってもらうことは、非常に合理的な判断だと思います。

もちろん、全体としてこれで良かったのかどうかは、これから日本人全体で時間をかけて考えていく必要があると思いますが、今まで通りのやり方(中国の書籍から引用し、当日に公表すること)でやっていたとしても、結局ある一定の人たちから批判されるのは目に見えています。

まぁ本論から外れてきたのでこれくらいにしますが、いずれにせよ、今回の新元号騒動?は、中国や他国も含めて、改めて日本の過去と未来について考える良いキッカケになったのではないかと思います。

個人的には、オリンピックやワールドカップ並みか、それ以上のイベント(実際に盛り上がったのは発表前後も含めて半日くらいで短かったため)として楽しむことができました。

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/女系図でみる驚きの日本史-新潮新書-大塚-ひかり/dp/410610735X/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E5%A5%B3%E7%B3%BB%E5%9B%B3%E3%81%A7&qid=1554545040&s=books&sr=1-1-catcorr

 

参考図書:『女系図でみる驚きの日本史』
発行年月:2017年9月
著者:大塚ひかり(おおつか・ひかり)
発行所:新潮社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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