学歴は重要ですか?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第54回

~『学歴無用論』(盛田昭夫著)を読んで学んだこと~

 

必要なのは学歴かそれとも。。。

 

本書はソニーの盛田昭夫さんが書かれた本です。私が本書を初めて読んだときに感じたのは、こういう会社もあるんだな。ということでした。

というのも、企業というのは、その規模が大きくなればなるほど学歴というものを重視するものだと勝手に思い込んでいましたので、ソニーのような大企業の社風が学歴にこがわらないということに違和感と驚きを感じたからです。

読書オタクとしては、学歴より読書歴の方がよっぽど大事だと思っているため、盛田さんの意見には大いに賛同しますが、彼のこの考え方も、社内に浸透し、社風として形成されるまでには相当な苦労があったであろうと推測されます。それについて、うかがい知ることができる箇所を、今回は引用したいと思います。

 

 
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E6%A4%9C%E9%96%B2-%E5%88%B6%E9%99%90-%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%81%AE%E8%87%AA%E7%94%B1-%E6%8A%91%E5%88%B6-%E5%88%B6%E9%99%90%E3%81%99%E3%82%8B-%E3%82%BB%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3-%E6%A8%A9%E5%88%A9-610101/

 

【この本のポイント!】

仕事と遊びを混同するな

日本とアメリカとを比べて、どちらにストレスやテンションが多いだろうか。アメリカの生活は一見大層気楽で、豊かで、暮らしの苦労はなさそうに見えるけれども、アメリカに暮らして、彼らの生活に深く触れてみれば見るほど、実際は、その逆のような気がしはじめてきた。彼らの生活のテンションは、日本のそれよりはるかに高いのではないかと思われる。
だいいち、アメリカには年功序列制というものがない。大過なくじっとしていれば、年とともに給料も地位もあがるというようなことは、絶対に期待できない。それどころか、クビがいつとぶかわからない。会社はその人の仕事が、その給与に値しないと判断すれば、いとも簡単にクビを切ってしまう。逆に、充分の働きがあり、いまよりもっと高い地位と給料で雇ってくれる会社があれば、即座にいまの会社におさらばして、その良い地位につくこともできる。働きがあれば、自分で自分の地位をあげてゆく方法はいくらもあるが、反面、働きがなければ明日にでも地位を失うかも知れない。それが上位になればなるほど激しいのである。(中略)
こんな状態で年中働いているのだから、下手をすればノイローゼになってしまう。せめて年に二、三週はそれらの圧迫のすべてから完全に解放されて、自然の中で、伸び伸びと休息したいと思うのは当然で、そこにバカンスの意味も大いに出てくるのだと思われる。(中略)
話がいささか横道にそれたかも知れないが、私の言いたいことは、人間の本性が緊張と弛緩を望んでいるのだとすると、日本では、皮肉な見方をすれば、日常の仕事の方でリラックスして、遊びの方でストレスを楽しんでいるのではないだろうか、ということである。ここまで極論するのは酷かも知れないが、前に言った、日本人は人生の楽しみ方が下手だというのは、遊ぶ技術だけでなく、心構えがおかしい、整理ができていない、ということである。楽しみを生活の中ではっきりと整理区分しないで、本来遊びであるところにストレスを持込み、仕事にふりむけた筈の時間の中に楽しみを探そうとしたりする。これでは困るのである。

『学歴無用論』P60~62

履歴書を焼く

私の願いは、なんとかして日本の土壌にも、人を正しく評価する習慣を植えつけたい、ということである。そのために、まず安易な評価のよりどころとなっている学歴を抹殺してしまうこと、あの人は何大卒の何科を出たなどという先入観念を追い払ってしまうことを考え、昭和四十年の春、「履歴書を焼いてしまう」という形で宣言したのである。
これは言葉のせいで妙なセンセーションをまきおこすこととなったが、まさか本当に履歴書を焼いたりはしない。それはちゃんと人事部に保管はする。しかし、いったん入社したら、その人の学歴などは人事カードそのほかの記録に一切記入しないことにしたのである。だから、ある人が人事異動でよその課へ移るとすると、その行先の課長のところへ人事カードがまわるわけだが、それには年齢、入社年月日、などはあっても、学歴はいっさい書いてないわけである。
これは、ひとたび我が社に入社した以上は、それ以前の学歴はいっさい考えず、いかなる場合にも公表したり、参考にしたりせず、中卒であろうと、高卒、大卒であろうと、一人一人にその知識才能を自由に発揮してもらって、それを偏見なく評価する精神と制度をたててゆくための、第一歩を踏み出そうということに他ならない。我が国の社会環境のもとでは、終身雇傭と年功序列制をいちどきに否定することはできないが、どの学校を出たかによ
って人を評価するような偏見をまず第一に取り去ることによって、どうして人を評価してゆくかの方法を、真剣に考えはじめることと信じるのである。(中略)
実際の新しい評価手段を確立せずに、先に現在ともかくも客観的評価基準としてあるものを取り去るのは暴挙である、という議論だが、これにはたしかに一理ある。しかし、学歴を基準と考えること自体が、意味のない先入観念だ、と私は言いたいのである。
学歴というものは、客観的評価手段というより安易な手がかりに過ぎない。(中略)
その意味で、私に言わせれば、大変なことになっていいのである。まず、エバリュエートする姿勢を身につけることが必要なのだということを、身をもって感じさせることが大事なのだ。だから、まっさきにハシゴをはずしてしまうことにした。ハシゴがなくなってしまうと、はじめて、いかにして登るかということを考える。ハシゴをかけたままにしておいて、ハシゴなしで登ることを考えろといっても、どだい無理で、真剣味の出てこよう筈がないからである。

『学歴無用論』P87~90

 

 
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E9%9B%A2%E5%A9%9A-%E5%88%86%E9%9B%A2-%E7%B5%90%E5%A9%9A%E3%81%AE%E5%B4%A9%E5%A3%8A-%E5%88%86%E5%89%B2-%E5%BC%95%E6%95%B0-%E9%96%A2%E4%BF%82-%E7%AB%B6%E5%90%88-%E5%A5%91%E7%B4%84%E9%81%95%E5%8F%8D-619195/

 

今回は2箇所引用しましたが、最初の引用部分でアメリカと日本の比較について書かれていたところは非常に興味深いです。

要は、日本人は雇用と給料が比較的保証されている人が多いため、平日の仕事中は遊んで、週末の余暇を仕事以上に頑張っている人が多い、という盛田さんの指摘に対して、ドキッとした人も多いのではないでしょうか?最近は終身雇用も崩れつつあり、また、個人事業主やフリーランスで働くことを選択する人も日に日に増えているように感じますが、それでも、日本はまだまだ雇用と給料が保証されている人が多いような気がします。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。企業としての継続性や責任感という観点においては、終身雇用的なやり方は非常に効果があると思います。いつ無くなるかわからいような会社、いつ既存の事業を投げ出して全く別の事業を始めてしまうような会社に対して、誰だって長期的に付き合いたいとは思いません。よって、この日本的なやり方をすべて否定する必要はありません。

ただ、その安定的な立場を利用し、それが既得権益化し、日々安穏と生きるというのでは、問題があると言わざるを得ません。ビジネスの世界は江戸時代ではなく戦国時代です。日々が戦いであり、油断したら即退場に追い込まれます。

ところが、日本人や日系企業の中には、江戸時代的な考え方で日々を過ごしている人が少なくないように感じます。引用の第二部分についても、結局は、自分の頭で考え、苦労して判断を下し、その決断の責任をとる。そういう気概がある人が少ないのだと思います。自分で責任を取りたくないので、他人がつくった、国や組織が作り上げた判断基準に沿って決めるのだと思います。これでは、士農工商で身分や地位がある程度決められていた江戸時代となんら変わりません。

昨今のグローバル時代にそぐわない考え方であることは言うまでもありません。盛田さんは、何十年も前から本書を通して現代日本人に警鐘鳴らしていました。

今一度、本書に書かれていることの意味を考えたいものですね。

 

一介の読書オタクより

 

 
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E5%AD%A6%E6%AD%B4%E7%84%A1%E7%94%A8%E8%AB%96-%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E7%9B%9B%E7%94%B0-%E6%98%AD%E5%A4%AB/dp/4022604158/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1504914952&sr=1-1&keywords=%E5%AD%A6%E6%AD%B4%E7%84%A1%E7%94%A8%E8%AB%96

 

参考図書:『学歴無用論』
発行年月:1987年5月
著者:盛田昭夫(もりた・あきお)
発行所:朝日新聞社

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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