相手の発言に寛容になりましょう!
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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第45回
~『嫉妬と自己愛 「負の感情」を制した者だけが生き残れる』(佐藤優著)を読んで学んだこと~
みなさんは嫉妬をしたことがありますか?
嫉妬したことがまったくないという人は恐らくいないと思います。また、たとえ、嫉妬などしたことがない、という人であっても、それは意識したことがないだけで、つまり、嫉妬心を抱くことが少なかったり、しても弱かったりするだけで、ゼロだということはまずないと思います。
なぜなら、誰であっても何らかのコンプレックスを抱えているからです。身体で悪いところが全くない人がいないように、コンプレックスがまったくない人もいません。
そして、コンプレックスがあるということは、自己愛につながり、ひいては他人への嫉妬へとつながります。それは、本書を読めばよくわかります。
問題は、一般的に良いことや優れていることだと思われていることであっても、本人からすればコンプレックスである場合があります。たとえば、福耳は一般的にお金持ちの運があるということで良いこととされますが、一方で、ただ単に耳が大きいだけともいえます。もし本人が耳が大きいことを気にしているのであれば、福耳だのお金持ちだの言われてもただ単にコンプレックスをいじられているだけですし、他方で、言っている方は褒めているつもりですので厄介です。
このコンプレックスについては、本書の下記の箇所に詳しく書かれていますので、以下に引用します。
画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E5%BF%83-%E6%84%9B-%E6%84%9F%E6%83%85-%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B9-%E8%B5%A4-%E9%81%8B-%E6%90%8D%E5%A4%B1-%E5%AB%89%E5%A6%AC-%E5%88%87%E6%9C%9B-%E6%82%B2%E3%81%97%E3%81%BF-1211340/
【この本のポイント!】
人のコンプレックスを笑うな
(中略)そもそも、その前段階として、嫉妬を買わないことが大事です。能力のある人間に勝手に嫉妬心を燃やすというのは、防ぎようがないことのように思えますが、「無用な嫉妬」は避けることが出来るはずなのです。
キーになるのは「言葉」です。往々にして、不用意な一言が相手を怒らせて、嫉妬に火をつけたり、それを増幅させてりすることが多いのです。
例えば、「お前、嘘をつくな!」と言えば、「何を!」ということになる確率が高い。でも、「お互い正直にやろうぜ」と対応したら、少なくともその場で喧嘩にはならないでしょう。言っていることは同じにもかかわらずです。論理ではなくレトリックが大事になるのは、そういう局面なのです。
他人に対して絶対に言ってはならないことを指摘しておくとすれば、それは「コンプレックスをいじる発言」です。たとえば、同僚のミスを指摘するのはいいとして、そのコアの部分にあるパソコンが苦手とかコミュニケーションに難があるとかいう部分には、必要以上に触れるべきではないでしょう。
人間は、自覚しているだけに触れてほしくないコンプレックス―――それも自己愛に端を発するわけですが―――をいじられると、狂います。表面上は平静を保っていたとしても、内心発言者に対する怒りや嫉妬の念でいっぱいになるのです。逆ギレすることもある。そうなれば、人間関係の修復は困難です。
とっさに出てくる言葉を制御するのは、簡単なことではありません。日頃から「言葉づかい」を意識し、必要なシミュレーションを重ねておくべきでしょう。鍛えるべきなのは、「自分が言われたらどう感じるか」という想像力、「健全なる他社性」です。
(中略)話はそれますが、低年齢化が進む英語教育も、その点で大いに問題ありです。外国語のコミュニケーション能力不足が強調されるあまり、現場では「聞く」「話す」レッスンが中心になっています。しかし、「聞く」「話す」「書く」が、「読む」能力を上回ることはありません。言語能力のアップには、レベルの高い文章の読解にチャレンジすることが不可欠なのです。(中略)
自らをマネジメントして、心の平静を保つ
いたずらに嫉妬心を刺激したりしないためには、言葉の使い方が大事だと言いました。ただし、そのためには、常にできるだけ冷静な精神状態を保ち、多少のことでは動じない心を養うことが必要になります。誰かの発言や行動に、いちいち腹を立てない。あえて言えば、過度に感動したりもしない。それでこそ、売り言葉に買い言葉の修羅場を避けることもできるのです。(中略)
部下の叱り方、褒め方にもノウハウがある
(中略)その叱り方、褒め方ですが、実は私は、当初ちょっとしたミスを犯していたことに気づかされました。私が学生の頃は、叱られる時には先生の部屋に一人で呼ばれたものです。逆に褒める時には、先生はみんなの前で褒める。それが鉄則だと信じ込んでいたので、自分が教える立場になってもそうしていたのです。ところが、ある時同じ職場の教授に「みんなの前で褒めるのはNGですよ」と耳打ちされました。
みんなの前で褒める。すると「褒められなかった」人間たちが、「要領のいい奴だ」といった悪口をSNSで始めたりする。嫉妬というよりは、「あいつだけ持ち上げられるのはつまらない」といった感情なのでしょう。いずれにしても、結果的には褒めたはずの学生がいたたまれなくなってしまうというわけです。そのアドバイスに従い、それからは褒める時も、他の学生のいないところでやるようにしました。これは、会社組織でも参考になるノウハウだと思います。(後略)
『嫉妬と自己愛 「負の感情」を制した者だけが生き残れる』P199~205
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E8%87%AA%E4%BF%A1-%E8%87%AA%E5%B7%B1%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8-%E5%BF%83-%E6%84%9B-%E4%B8%BB%E6%A8%A9-%E6%8A%B1%E6%93%81-%E5%AE%87%E5%AE%99-%E8%87%AA%E5%B7%B1%E3%81%AE%E6%84%9F%E8%A6%9A-2076792/
自分がされて嫌なことは相手にしてはならない。
子供のときに周りの大人から教わることで、また、多くの人が気をつけていることの一つでしょうが、これを100%実現することほど難しいことはありません。
なぜなら、人によって好き嫌いは異なるからです。
本書の引用箇所にあるとおり、相手のコンプレックスは相手が嫌だと思っていることの一つであり、よって、それを茶化すことは避けるべきです。ただ、そのコンプレックスが何なのかはある程度付き合わないとわかりませんし、付き合いが長くても100%わかることはまずありません。つまり、何気なく雑談しているときに、自分の何気ない発言で、思いもよらず相手を傷つけている可能性が大いにあるのです。
ただ、あまりに気にし過ぎると天気ぐらいしか話題にすることがなくなってしまいますし、相手といろんなことを話すことで、相手の人柄や好き嫌いをうかがい知ることができるのも事実です。また、ある程度突っ込んだ話をし、本音で付き合わないと仲良くなることができません。よって、相手を傷つけることを過度に恐れてはいけませんし、同様に、自分が相手の悪気のない発言で傷つけられても、ある程度は寛容になる必要があります。
他方で、相手に対する発言のなかで気をつけられるポイントはあります。それは、外から見えることについてです。たとえば、身長や体重、顔や肌、髪の毛などを含めた容姿に関すること、声や話し方、あとは持ち物や身に着けているものなどは、下手に言及することは避けるのが無難です。また、趣味や信仰などの考えについては、ある程度仲良くなるまでは、話題にすることは避けた方がいいでしょう。
いずれにしても、まずは自分が寛容になるところから始めた方がいいと思います。
相手を傷つけることは避けなければなりませんが、どのような発言で相手が傷つくかを理解することは難しいですし、相手の何気ない発言をコントロールすることもできません。自分も普段誰かを傷つけてしまっているかもしれないのだから、誰かに傷つけられるのはある程度は仕方ないことだということを、日々心がけていきたいですね。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E5%AB%89%E5%A6%AC%E3%81%A8%E8%87%AA%E5%B7%B1%E6%84%9B-%E8%B2%A0%E3%81%AE%E6%84%9F%E6%83%85-%E3%82%92%E5%88%B6%E3%81%97%E3%81%9F%E8%80%85%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%8C%E7%94%9F%E3%81%8D%E6%AE%8B%E3%82%8C%E3%82%8B-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%B0%E6%9B%B8%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%AC-%E4%BD%90%E8%97%A4-%E5%84%AA/dp/4121505743/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1499498681&sr=1-1&keywords=%E5%AB%89%E5%A6%AC%E3%81%A8%E8%87%AA%E5%B7%B1%E6%84%9B
参考図書:『嫉妬と自己愛 「負の感情」を制した者だけが生き残れる』
発行年月:2017年2月
著者:佐藤優(さとう・まさる)
発行所:中央公論新社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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