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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第106回
~『立ち上がれ日本人』(マハティール・モハマド著)を読んで学んだこと~
生涯勉強、生涯現役
2018年5月9日、この日のマレーシアは政治的に大きな出来事が起こりました。この日、マレーシアの下院議員選挙が実施され、野党連合が過半数を獲得した結果、翌10日に国王からマハティール氏が首相に任命されましたのです。
マハティール・モハマドの名前を知っていた人や聞きかじっていた人は少なくないと思いますが、それでもレジェンドというか、過去の人であると思っていた人が大半でしょう。それもそのはずで、彼の年齢はもう90歳を超えており、マレーシア国民やマレーシア通はいざ知らず、まさか議員に復帰することも、首相に返り咲くことも、他のほとんどの国の国民には想像もしなかったと思います。
正直、読書オタクもこの出来事をキッカケにマハティール首相に興味をもったグループの一人です。そんな中、何かの記事かアマゾンで本書を見つけ、購入した次第です。
2003年出版なので15年も前の本ですが、当時から中国が大国になることを名言していたことなどはさすがです。この頃は、統計的には中国が近い将来GDPで日本を追い抜くことは予想されていたでしょうが、日本ではそのことを話題にする人はほとんどいなかったように記憶しています。
いずれにせよ、本書で気になったところを以下に引用します。
画像引用元:https://pixabay.com/ja/日没-海-パドリングに立ち上がる-sup-水-自然-ビーチ-593152/
【この本のポイント!】
知識教育を怠るな
教育は国の根幹です。
国家を発展させるためには、国民が深い知識を持っていることが重要です。私たちの一人一人がことの善悪を見極め、国の繁栄にとって何が必要かを判断しなければなりません。よりよい知識がよりよい結果を導くのは、当然のことです。
知識は教育を通して得られるものです。それも学校教育だけでなく、生涯を通じて勉強を続けることが必要です。私たちは日々学び、その知識を毎日活用していかなければならないのです。
本を読み、経験を積み、人と話し、その話を注意深く聴く能力は、何にも増して大事なものです。そしてシンポジウムやセミナーに参加し、議論をすることで得た情報が知識となります。知識とは、情報を自らのものとして吸収することです。
江戸時代、日本人は寺子屋という私塾で学んできました。明治時代には国家を挙げて学校教育に取り組み、義務教育が始まりました。義務教育の歴史を振り返ってみると、日本のたどった道は、西洋やイスラム諸国ともさほど違いません。
教育はもともと、宗教を学ぶことから始まったのではないでしょうか。(中略)
かつて欧州人は、先進的な科学や数学を学ぶためにアラビア語を学びました。ほとんどの科学の本は、アラビア語で書かれていたからです。古代ギリシャで生まれた数字や科学を発展させたのはアラブ人でした。
しかし今、新しい科学の知識の多くは欧米諸国に集約されています。新しい発見の多くは英語圏の国々でなされ、学術論文は英語で書かれ、発表されています。ドイツ語で書かれた論文もすぐ英語に翻訳され、最近では日本人でさえ最初から英語で執筆します。
最新の学問知識を得るには、英語という言語を極めなければならないのが現実です。いま英語は英語圏の人々の言葉であるだけでなく、とりわけ科学の分野で世界の共通言語となっているのは明白です。(中略)
なぜなら英語を学ぶということは、世界の共通言語を習得することになるからです。世界レベルの知識を得るには、単に英語で日常会話ができたり、筆記試験で答えられるだけではなく、英語で小論文を書き、議論できることが必要なのです。
科学的思考の重要性
(中略)ノーベル賞は、研究者個人にとっての目標となり、成功を測るバロメーターともなります。私たちは、高い知識を享受するための努力を惜しんではなりません。その努力は人類に貢献するものです。
2002年、日本の島津製作所に勤める田中耕一さんがノーベル化学賞を受賞しました。学者でもなければ博士号も持たない、ごく普通のサラリーマンです。欧米人はかつて、日本企業は欧米が開発した技術を真似るだけだと批判してきました。しかし日本は今、研究開発に汗水たらしているのです。
企業にとっても国家にとっても、新技術の研究開発は日に日に重要になっています。
日本では大学などの研究機関だけでなく、企業における実用的な応用研究を重視しています。これが競争力を高め、新しい商品開発につながっています。大学の研究はよりアカデミックで、研究のための研究という側面があることは否めません。学者の多くは研究を続けるために論文を書き、成果を実用化することは二の次になりがちです。
しかし利益を生み出さねばならない企業では、基礎的な研究に加え、ビジネスに結びつく応用研究が重要です。結果として、世の中の役に立つ研究がなされます。公の役に立ち、ビジネスの役に立つ研究をした上で、個人としてもノーベル賞を受賞できたら、なんと素晴らしいことでしょう。(後略)
『立ち上がれ日本人』P51~P57
画像引用元:https://pixabay.com/ja/日本人-畳-効果の画像-2667883/
本引用箇所を読むだけで、マハティール氏の教養の高さと日本への理解度の高さがうかがい知れると思います。
マハティール氏も言っていますが、学校教育は大事です。ただ、大人になってからも学び続けること、大人になってからの学習がもっと大事なのは言うまでもありません。
たとえば、30代にもなったら組織の中間管理職を務められるだけのマネジメント能力が求められるでしょう。けど、自分は組織に属していないから関係ない。と反論する人もいるかもしれませんが、山奥で隠居するでも無い限り、仕事とは誰かと一緒にするものですし、お客様は今のところ人間です。よって、人と関わらないことはあり得ませんし、ほとんど自分一人で完結するような仕事であっても、自己マネジメント能力が必要となります。
また、40代にもなって世間知らずで何もできないような状態では困りますし、大人としての経験や見識がないと世の中から相手にされないでしょう。
50代にもなったら組織では経営者やトップとしての能力を求められますし、学校でいえば、校長先生や教頭先生のようなポジション、つまり、大人として年下の人たちを導く立場になっていないといけません。
そして、これらの能力は一日や一ヶ月、一年で得られるものではありません。日々の積み重ねによるものが大きいです。年齢を重ねれば重ねるほど差が出てしまうのは、マハティール氏が指摘するように、読書を怠らず、いろんなことにチャレンジして経験を積み、人と議論することで自分の足りないところに気づき、新たに得たひらめきを行動に移してまた経験することで単なる情報が血となり、肉となって知識として蓄積されます。
本を読み、経験を積み、人と話し、その話を注意深く聴く能力は、何にも増して大事なものです。そしてシンポジウムやセミナーに参加し、議論をすることで得た情報が知識となります。
本書は15年前に刊行されておりますので、当時のマハティール氏の年齢は80歳近い年齢ですが、まるで孔子の論語のような、年齢から来る重みのようなものを感じるのは私だけでしょうか?
本書は、外国人が見た日本というジャンルの中では、特に読むべきであると感じます。みなさんも本書を読んで90歳を超えても現役で元気のあるマハティール氏から、元気を分けてもらいましょう!
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/立ち上がれ日本人-新潮新書-マハティール-モハマド/dp/4106100452/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1536393308&sr=8-1&keywords=%E7%AB%8B%E3%81%A1%E4%B8%8A%E3%81%8C%E3%82%8C
参考図書:『立ち上がれ日本人』
発行年月:2003年12月
著者:マハティール・モハマド(まはてぃーる・もはまど)
訳者:加藤暁子(かとう・あきこ)
発行所:新潮社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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