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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第112回
~『アジアビジネスで成功する25の視点』(財部誠一著)を読んで学んだこと~
苦しいことを率先してやらなければ人は付いてこない。芸術と芸は似て非なるもの。
多くの日本企業が海外へ進出し始めてからもう何十年と経つと思います。海外進出して成功する企業もあれば、失敗して逃げ帰る企業もあります。他方で、稀ですが、一旦撤退後にもう一度進出して成功する企業もあります。
理由は一概には言えませんが、ほとんどの場合は人に関係していると思います。
たとえば、逆の立場で考えた場合、日本に進出してきた企業が日本のやり方にまったく合わせず、本国のやり方をそのまま押し通して上手くいくでしょうか?日本の文化や慣習をまったく考慮せず、英語やその他の外国語でのコミュニケーションに終始している人たちに対して親近感がわくでしょうか?日本の経済や雇用に貢献していない外資企業を応援したくなるでしょうか?
これらはすべて、その会社の経営陣や働いている人たちの考え方が反映されています。
世の中には上も下もないという博愛精神を述べるつもりはありませんが、上下はあってもいいのですが、組織や個人がすべての能力においてや他者を上回っていることなどあり得ません。仮に教える立場だとしても、教えることで相手から教わることもあるでしょうし、ここは自国や自分が優れているが、別のこれについては我々も学ぶべきだという点は必ずあります。
のっけから長くなりましたので一旦切りますが、本書では特に下記引用箇所が気になりました。
画像引用元:https://pixabay.com/ja/泊-都市の景観-町-アジア-日本-空-都市-スカイライン-821494/
【この本のポイント!】
収益は日本人が流した汗に比例する
(中略)地方都市で資生堂の販売店を募集すると、地元で化粧品店を営んでいるオーナーたちが殺到します。それだけ中国における資生堂ブランドの人気は高いということですが、資生堂が契約するのは10社に1社程度だといいます。資生堂の理念や経営方針を理解し、共鳴してくれそうな経営者だけをピックアップします。(中略)そして肝心の支払は「前金」です。(中略)前金にすればそれですべての問題が解決するかといったら大間違いです。全額前金にすれば、商品の売れ行きに対する全責任を資生堂に押し付けられてしまいます。高額の前金を払って「売れません!」となったら、販売店のオーナーたちは暴動を起こします。「金返せ」の大合唱が起こり、それが政府に伝播し、資生堂は難しい対応を迫られるに違いありません。
そこで資生堂は売れるまで経営指導をやり続けます。経営哲学から経理、人事マネジメントなどオーナーへの教育はもちろん、美容部員の接客マナーまで、あの広大な中国全土のお店に、店が繁盛するまで資生堂の日本人社員が自ら足を運んでいるというのです。
とかく日本企業は、元の札束で中国人社員の頬をひっぱたいて大変な仕事を現地スタッフに押し付けますが、資生堂は日本人社員が自ら第一線で汗をかいています。これぞ、“中国ビジネス成功の極意”なのです。
18 失敗する営業・成功する営業
ドブ板営業
日本の製造業は「生産」では見事なグローバル化を実現しました。「モノづくりは人づくり」という日本製造業固有の理念や、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)活動などを通じて日本企業は新興市場でも高品質な製品の製造を可能にしてきました。ところが市場としての新興国では、日本企業の多くは失敗、撤退を繰り返してきました。欧米のように法律が整備され、ガバナンスのきいたビジネスインフラがあり、モラルも高い先進国相手なら、日本企業はいくらでもモノを売ることができました。ところが生産拠点ではなく、市場としての新興国はジャングルのようなもので、その世界に精通していなければ、まともに歩いてゆくことすらできません。
対中進出した日本企業が、従業員にカネを持ち逃げされたり、二重帳簿を作られたり、さらには地元政府の身勝手なルール変更で苦しめられたり、挙句の果てに代金回収すらできずに撤退といった話は枚挙にいとまがありません。そのたびに「中国」が槍玉にあげられますが、それは井の中の蛙のやることです。まともなビジネスが通用しないのは中国だけではなく、ブラジルでもインドでもロシアでもまったく同じなのです。事実、過去にこれらの国々に進出した日本企業の大半が事業に行き詰まり、逃げ帰ってきているのです。
ブラジルで大成功した味の素の成功要因は、最終的にはひとつの要素に集約されます。それは「日本人社員が現地化」していることです。機械的に3年で帰国を繰り返す日本人幹部をブラジル人社員たちが信用するでしょうか?あるいは難しい市場開拓や代金回収の仕組みを構築する際に、札束で現地社員の頬をひっぱたいて、やらせるだけでまともな成果がでるでしょうか?
ブラジル味の素ではポルトガル語が堪能な社員が合計12年も勤務しました。彼の上司や部下の日本人たちも、4年、5年の駐在があたりまえです。そしてもっとも困難だった販路と代金回収のネットワークを創り出すために、ブラジル味の素は日本人社員とブラジル人社員が2人セットで、ブラジル全土のスーパーマーケットを一軒ずつ、訪ね歩くという気の遠くなるような作業をやり抜いてきたのです。
(中略)“ドブ板営業”という言葉は平板な根性物語を連想させますが、海外で成功するために唯一確実な手法は“ドブ板営業”です。なぜなら日本人の幹部社員自ら“ドブ板営業”することはいわば究極の現実主義であり、現場から得られる正しい現状認識の集積があって初めて適切な戦略構築が可能になるからです。
ドブ板ばかり歩いていると大局観を失うのではないかと危惧もされますが、そこに住む人々の息遣いを聞いたこともない外国人がヒット商品を生み出したり、販売促進に成功したりすることなどありえません。
新興国で多く見受けられるのは通貨価値の違いに後押しされた札束ビジネスです。自らの手は汚さず、現地社員に指示さえ出していれば事が足りると信じ込んでいる日本人がどれほどいるでしょうか。「苦しかった中国ビジネスを思い出して涙が止まらない」人間がいなければ、中国で商売を成立させることなど絶対にできません。
『アジアビジネスで成功する25の視点』P149~P154
画像引用元:https://pixabay.com/ja/マレーシア-クアラルンプール-日没-klcc-建物-ランドマーク-2032975/
この指示するだけで仕事をした気になっている日本人は残念ながら少なくありません。
このような人たちの多くは頭がよく、理路整然としており、一見正しいことを言っているように聞こえます。
ただ、多くの場合はただ単に正論を言っているだけなのです。そして、その正論は現実に即していないことも多く、「言うは易く行うは難し」ということわざにもあるとおり、実際にやることが大事であり、その大変さを理解している人であればまた話は変わってきますが、指示するだけの人はその苦労も知らずにただ言っているだけですので、言われる方もしらけます。
最近のスタートアップでは、アイデアを出して、クラウドファンディングでお金を集めて、モノをつくって、それを売って儲けてやろう。という輩が多いように思いますが、アイデアだけでお金がもらえるほど世の中は甘くありません。
できる人であればあるほど、アイデアの価値などほとんどなく、実際にやることがどれだけ大変かというのを理解しています。
同じように、何かをやる際に、特に大企業の社員や比較的年配の人、また下手に有名な人に多いのですが、自分は企画するだけ、名前を貸すだけで、実際に売ったり参加者を集めたりという地道な作業は他の人がやるもんだ。と高を括っている人がいます。
実際にやることの苦労をわかっている人で、自分にその能力が無いので他の人にお願いするというのならまだ理解できますが、たいていの場合、このような人たちは、たとえ失敗しても自分の計画のミスや実力の無さを顧みず、要は一番簡単な仕事しかしていないにもかかわらず、実際にやるという大きな仕事をした人たちに責任を押し付けて終わりにします。
これでは、遅かれ早かれ見放されることは間違いありません。
誰であっても、どのような組織であっても、良い時と悪い時があります。良い時は周りもそれに乗っかろうということで、その人たちに多少の驕りがあっても目をつぶってもらえますが、このような間にも着々と恨みを買われています。
このような人たちは、悪くなった瞬間に周りから見放されてヒドイ奴らだと文句を言うのですが、そうさせた本人たちの過去の行動を顧みる人がどれだけいるでしょうか?
話がだいぶそれてしまいしたが、ここでいう「ドブ板営業」とは、足を使った仕事であると理解しています。私も中国に居て歩くことが多いのですが、それを聞いた日本の大企業勤務の人が、「お金の方が大事なので、自分だったら常にタクシーで移動する」というようなことを言っていました。これも正論ですが、私からすれば的外れです。闘うべき内容でもないので、いちいち反論しないで放っておきました。
別の件でも、ある時、こちらの対応に不満があったのか、サービスとはこれこれこういう風に、ここまでやるもんだと思いますよ。と、説教してきた人がいました。彼が言うことはまったくもって正しいのですが、だだの正論でしかありません。
というのも、その時の私は、いろんなことを鑑みて彼がいうことまでやらなかったので、的外れだと思わざるを得ないのですが、これも当事者ではなく外野だからなせるわざなのでしょう。
みなさんも相手を説教する前に、自分が口だけになってないかをぜひ顧みるようにしてください。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/アジアビジネスで成功する25の視点-PHPビジネス新書-財部-誠一/dp/4569796230/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1540129759&sr=1-1&keywords=%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%80%80%E8%B2%A1%E9%83%A8
参考図書:『アジアビジネスで成功する25の視点』
発行年月:2011年5月
著者:財部誠一(たからべ・せいいち)
発行所:PHP研究所
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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