その仕事、人任せになっていませんか?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第114回

~『「韓非子」を見よ!』(守屋洋著)を読んで学んだこと~

 

人に任せることと人任せは違います。

 

みなさんは韓非子(かんぴし)をご存知ですか?

戦国七雄がひしめいていた時代の中国の韓に韓非という優秀な法律家がおり、韓非子は彼によって書かれた書物です。ただ、韓では評価されず、後に中華を統一する始皇帝によって評価されました。

時代が進んで、蜀漢の諸葛孔明が劉備の息子の劉禅に韓非子の本を読むよう勧めたというくらいの名著として評価されていますし、かの有名な「矛盾」の話も韓非子由来と言われています。

同時代の中国の偉人として儒家の孔子が有名ですが、彼が性善説の考えを元に人間というものをとらえている一方、韓非子において貫かれているテーマは性悪説で、人は放っておくと悪いことするので法を制定して、悪いことをすれば法によって裁かれる必要あるというのが主な趣旨です。

ですので、特に、ビジネスマンやリーダーをしている人にとっては、韓非子が言っている性悪説を前提にした考え方がより実践的ではないかと感じます。

本書はぜひ完読していただきたいですが、特に気になった部分を以下に引用します。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/中国語-ドレス-戦士-アジア-旅行-素晴らしい-中国-壁-429924/

 

【この本のポイント!】

勘所さえ、押さえればいい

―大所高所より、目を配れ―

『韓非子』は上に立つ者のランクを三つに分けて、次のように語っている。

一「下君は己の能を尽くし、中君は人の力を尽くし、上君は智を尽くす」

自分の能力しか使えないようなリーダーは最低であって、人の智力をうまく使えるようなリーダーが最高なのだという。だとすれば、ご本人が目の色を変えて飛び回っているようでは、まだそれほどのレベルとはいえない。(中略)仕事はなるべく部下にやってもらう。自分は勘所だけ押さえて、黙ってにらみを利かせている。これが『韓非子』の目指す理想の指導者像だ。
これは手抜きとは明らかに違うし、責任回避でもない。こういうあり方を身につけることができれば、現代のリーダーもそれほどあくせくすることなく、比較的余裕をもって与えられた責任を果たしていくことができるであろう。細かいことまでいちいち首を突っ込んでいたのでは、体が幾つあっても足りない。ついには奔命に疲れ果ててしまうのが関の山である。

■相手の「善意」に期待をかけるな!

ただ、仕事は部下に任せるといっても、『韓非子』に言わせると、その任せ方が問題になる。部下を信頼して仕事を任せることができるのなら、リーダーにとってこんな楽なことはない。だが、それで果たして大丈夫なのか。よく飼い犬に手を噛まれたという話を聞く。いまでもそんなケースが後を絶たない。なまじ信頼してかかったばかりに、そういう憂き目にあうのである。(中略)部下の忠誠心など当てにすべきではないとして、次のような話をしている。
「相手が背かないことに期待をかけるのではなく、背こうにも背けないような態勢をつくりあげる。相手がペテンを使わないことに期待をかけるのではなく、使おうにも使えないような態勢をつくりあげる。これが名君というものだ」(中略)

すでに述べたように『韓非子』は、人間とは本質的に信頼しがたいものだ、という前提の上に立っている。当然のことながらこの命題は、上司と部下の関係にもそのまま適用される。だとすれば、頭から部下を信頼してかかるのは、あまりにも危険なことだと言えるだろう。

『「韓非子」を見よ!』P53~P57

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/amne-machen-amnye-古代-anyi-アーキテクチャ-3753191/

 

私個人の意見をいえば、個人の人間関係は孔子の性善説にのっとって考えてもいいと思いますし、普段人々が性善説で暮らせるようになってようやく平和な時代になったと言えるでしょう。つまり、個人対個人の関係では、騙す人の方が悪く、騙される人が責められる必要はないのです。
ところが、ビジネスは違います。

ビジネスにおいては騙された方が悪いというのが世界の常識です。何か仕事をお願いして相手ができなかったとしても、それは仕事をお願いする側が見抜く力が無かったというだけであり、すべて自分の落ち度です。ですので、基本的にビジネスは性悪説にのっとって考える必要があり、常に油断してはならないという韓非子の教えに沿って運営するのが賢明です。

同様に、裏切られるというのは、ビジネスの場合は裏切られる側にも大いに問題があります。

たとえば、誰かと一緒にビジネスを始めたとします。そして、裏切られたとします。
この場合、反省しない人は、裏切った人のことを責めます。自分は善良な人で、彼は悪人であり、悪人の彼に騙された自分は被害者でかわいそうな人だという論法です。

ただ、少しでも真剣にビジネスをやったことがある人であれば、彼の話に耳を貸すことはないでしょう。むしろ、コイツはビジネスマンとして失格だという烙印を押されるのがオチです。

なぜならなら、裏切られるということは、その人にも落ち度があるからです。

たとえば、一緒にビジネスを始めた時はお互いの利害が一致していても、やっていく途中で利害が相反し、次第に疎遠になって、もう一人が自分で同じようなビジネスを始める場合もあるでしょう。この場合はどちらかが一方的に悪いとは言い切れません。

あるいは、一緒にやると言ったにもかかわらず、一方はただ口を出すだけで何もしなければ、相手も愛想をつかして自分だけでやろうとするでしょう。この手の言うだけ番長的な輩は本当に厄介で、自分がただ最初に手を挙げたという「過去の功績」にしがみついて、それを鬼の首を取ったかのように永遠と主張し続けます。その後も継続して鬼の首を取り続けるであればいいのですが、たった一回の成果でもって永遠と甘い汁を吸おうとするのです。ですが、物事というものはやることが重要であり、また、プロであればよい結果を継続して出す必要があります。アマチュアでもまぐれで素晴らしい結果を出せるときがありますが、プロとアマの違いは、継続して結果を出せるかどうかです。

このような人は見限られて当然なのですが、当の本人はそのようには考えておらず、一緒にやろうと約束したのに上手くいき出した途端に裏切られた。と主張するのです。

もちろん、これが起業に関することであれば、「起業家は上手くいき出すと昔の恩を忘れる。」と言われるとおり、単純に割り切れるようなテーマではありませんが、ただ、やっている本人からすれば、助けてもらったのは非常にありがたいけど、実際にやっているのは自分であり、自分が一番得をして当然だと思うのも理解できます。

その辺のバランスが大事ですが、いずれにせよ、裏切られた。というような問題が発生する前に、当事者間で率直に意見をぶつけて話しあった方がいいでしょう。

話が随分脱線してしまいましたが、性悪説の本としては韓非子は良書です。皆さんもぜひ一読されることをオススメします。

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/「韓非子」を見よ-知的生きかた文庫-守屋-洋/dp/4837977839/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1541236726&sr=1-3&keywords=%E9%9F%93%E9%9D%9E%E5%AD%90

 

参考図書:『「韓非子」を見よ!』
発行年月:2009年5月
著者:守屋洋(もりや・ひろし)
発行所:三笠書房

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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