あなたは決めたことをやり切っていますか?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第123回

~『サービスのためのIoTプロダクトのつくり方』(野々上仁著)を読んで学んだこと~

 

アイデアだけでは単なる妄想です。

 

ここでも何回も言及しているかもしれませんが、アイデアなど誰でも思いつきます。よく、私はこのようなアイデアがいっぱいある。と、自慢する人がいますが、ほとんどのアイデアは、いわゆるヒト・モノ・カネを考慮していません。

単に思いついただけのアイデアは、能力と方法と資金のフィルターを通っていませんので、言わば妄想と同じレベルの無責任なモノです。よって、それ自体に価値はありません。

もちろん、革新的なアイデアはすぐに思いつくわけではなく、普段から考えて考えた考え抜いたうえでようやくパッと思いつくもので、良いアイデアは決して楽に思いつくものではありません。

ただ、そのように苦労して思いついたアイデアであっても、もしあなたが思いついたのなら、世界中で同時に少なくとも100人は思いついていると考えた方がいいでしょう。

そのうえで、思いついただけでやらない人、他の仕事もしながら少しずつ進める人などがいて、結果的に一番スピーディーにやった人がそのアイデアをモノにできるのです。

この辺りについては、本書の下記引用箇所の2つ目に詳しく書かれているので以下にご紹介します。

 

 
画像引用元:https://pixabay.com/ja/iot-モノのインターネット-ネットワーク-3337536/

 

【この本のポイント!】

 

IoTとデザイン

 

経営者はデザインを、デザイナーはビジネスを理解すべき

 

筆者が紹介してきたIoT製品に共通しているのは、どれもデザインが考えられている点だ。一方、日本では「技術は分かるけれどデザインは分かりませんので」と、デザインには関与しないと言う経営者や投資家に会うことが多い。逆にデザインで議論になると「プロの意見ですから」と意見を押し通そうとするデザイン系の人もいる。しかし、特にIoTプロジェクトではこれはどちらもご法度だ。(中略)
まずは「ユーザーに使ってもらうこと」、そして「使い続けてもらうこと」が大前提となる。
そのIoTとは、今までになかった「インターネットへの新しい接点」であり、人や社会への新しい「フィードバックシステム」である。最大の特徴は、データを扱う入出力方法や物の形状に決まった答えがなく、自ら考えて作る点だ。データを取得するためにはデザインが不可欠なのだ。そして関連するデザインの領域は幅広い。企業の理念やビジョンを表すコーポレートアイデンティティーのデザインから、製品やサービスのコンセプトデザイン、それを形にしたモノの形状としてのプロダクトデザイン、それを使うためのソフトエアやデバイスをコントロールするUIデザイン、製品を梱包するパッケージデザイン、さらには販売からアフターサービスまでユーザーとの接点を快くするためのサービスデザインなどだ。そしてそれら1つひとつが一貫した企業イメージとブランドにつながっている。
これらの「デザイン」に共通するのは「形」と言う意味ではなく「意図」という意味のデザインである。もっと言うと「目的をもって具体的に立案・設計する」という意味だ。そして本書が扱ってきたテーマも「IoTプロジェクト」に関するデザイン論である。(中略)
このIoT時代にあって、もはや経営者や投資家が、デザインは分からなくていいという時代ではない。逆もまたしかりだ。IoTゴールドラッシュが来るとするならば、デザインは金塊を掘り当てる道具なのである。

『サービスのためのIoTプロダクトのつくり方』P171~P173

 

アイデアそのものに価値はない

たまに「こういう良いアイデアがあるので、御社で実施しませんか?」と言う人に出会う。アイデアを出すので利益だけ欲しいというケースだ。筆者は、そこまで良いアイデアだと思うのであれば、基本的に自分のリスクで、自分で商品化することをお勧めしている。
確かにイノベーションに良いアイデアは必要だ。しかしそのアイデアは、その段階では実際に形にできないものかもしれない。“0”か“1”かで言えば、まだ極めて“0”の方だ。1つのアイデアから全体の構想やコンセプトを作って、実際の製品にしたりユーザー体験にしたりするまでには何十倍、いや何百倍ものブレークスルーが必要になる。(中略)つまり、アイデアを形にするためには、それを実現するための様々なアイデアを出さなくてはならない。
また、最初のアイデアはワクワクするが、問題解決のためのアイデア出しはうなりながらになる。(中略)
実際のところ、IoTで素晴らしいものを作っている企業は必ず数々のブレークスルーを経験しているし、その裏には何倍もの失敗が存在しているのだ。共通しているのは、妥協をせずにプロジェクトに取り組む姿勢を感じることだ。また、そういう態度でずっと答えを探していると、不思議なことに、ふとした瞬間に何かを発見することがある。セレンディピティをといわれる現象だ。残念ながらこれは、第三者的な視点では出てこないものである。(中略)

また、いきなり成功するような製品などほとんどできないのも現実だ。その際、メンバーを巻き込んでブレークスルーするために有効なのがプロトタイピングである。(中略)
たとえば3Dプリンターで形ができるだけでも、開発者はユーザー目線で話し始める。何かが失敗したということも分かる。逆に言えば、やってみて分かることがほとんどなのだ。(中略)
実際にモノが存在するということは、非常に強いことなのだ。根性論を全面に押し出したくはないが、まずは作る、そしてやり切ることが価値を生むのである。

『サービスのためのIoTプロダクトのつくり方』P213~P216

 


画像引用元: https://pixabay.com/ja/ショールーム-プロダクト-展覧会-浴室の付属器具-1740447/

 

実は、私自身、最近はデザインに対する感度が高くなりつつあります。

一つは、中国にいる私にとって、日々接している大量の中国製品のデザインが年々よくなっているのを実感しているからです。また、デザインに詳しい人やプロのデザイナーさんと接する機会が増えてきており、そのような理由もあり、今回の最初の引用箇所が気になりました。

デザインもアイデアの一つであり、たとえば、壁に絵を描くのであれば、2Dという制限を除けば、そこには無限の可能性があります。答えは無数にあり、何を描いても描かれたその絵は一つの答えになります。

アイデアを出すだけ、つまり、口だけで何もしない人の言い訳は、あれがない、これがない、こういう原因があるなど、あらゆる「制限」を持ち出します。

ただ、よく考えてみてください。世の中にあるもので制限がないことなどありません。

地球には重力という制限があります。
人間は酸素が無いと呼吸ができないという制限があります。
人間が飲まず食わず、一睡もせずに働ける時間も、個人差はありますが制限があります。

このような大きな話でなくとも、たとえば、囲碁や将棋にはルールがあり、そのルールの範囲内で手を考え、実行します。囲碁や将棋のプロが、ルールがあることに文句を言うでしょうか?

また、ルール上は認められていても、勝負という観点から実際には選べない手もたくさんあります。

モノづくりも同じで、アイデアを思いついた後に、それをカタチにするのには、本引用箇所にもあるように、何十、何百という難問を越えていく必要があります。

機能を決めた後、まず基板をつくるにあたってどのような素子を選ぶか?適当に買って来ると後で量産する時に無い。ということも考えられますので、できる限り特殊な部品は避け、長期的に購入できそうな部品やメーカーから仕入れる必要があります。

素子を選んだあとは基板の大きさをどうするか?素子をどのような配置にするか?既製品の筐体を購入して、それの留め穴を使うにしても、ちょうどいい大きさのものなんてまずありません。必ずどこか妥協する必要があります。

筐体を手に入れてから実際に基板を設計するにしても、素子の配置をいくら考えても留め穴を塞いでしまったり、素子の配置が悪くてパターンの結線が上手くいかなかったり、設計データ上にははんだ付け用の穴だけがあり、実際の部品を見て実寸を測らないと他の部品と干渉する恐れがあったりなどなど、基板一つをつくるだけでも様々な障害があります。

そして、実際に出来上がった基板を見たら、穴が開くべきところに穴が無かったり、このようなことを防ぐために、次回からは穴あけ忘れ防止用に通常のデータとは別に別のデータを用意したりと、日々改善とトライ&エラーの積み重ねです。

それでも少なくともデザインに関しては、3Dプリンタの登場により、デザインアイデアをカタチにするのはかなり楽になりました。自分で設計ソフトが使えなくとも、手書きで書いたデータを業者に送り、3Dで図面を作ってもらい、チャットでやり取りして修正した後、お金を払って発注することもできます。

最近の3Dプリンタは発展が目覚ましく、むしろ、一時期大量にあった3Dプリンタメーカーはもうかなり淘汰され、今ではレベルの高いメーカーか収益性の高いメーカーしか残っていませんが、モノによっては3Dプリンタでつくったモノで十分製品として使い物になるモノも出てきました。

そうでなくとも、単に形を確認するだけやプロトタイプとして一時的に使用するだけなら、オーソドックスなプラスチックのモノで十分ですが、そのようなモノであっても、既存の金型成型の筐体や製品と組み合わせることで、すべて成型品で賄うよりも随分プロトタイピングが楽になりました。

人間、いくら頭が良いと言っても限界があります。それに、実際に目で現実を見ることで新たに分かる問題点や発生するアイデアもあります。

そろそろまとめますが、中国でも日本でもあと1年くらいで5Gが正式に運用されます。

今のところ、IoTは半ば掛け声だけで、実際にIoT製品として活躍しているのはスマートドアくらいという認識ですが、まだ普及していない理由の一つとして、4Gの通信速度やデータ転送容量の制限があることは間違いないでしょう。

5Gの世界になるまでもう目の前です。

これだけモノづくりが簡単になっています。もちろん、まったくの素人にとっては難しいでしょうが、ソフトにしても、ブロックプログラミングの登場によって素人でもちょっとやる気があればできるようになってきています。

何度も繰り返しますが、アイデアだけではただの妄想です。

5Gの世の中になり、あらゆるものがインターネットとつながるようになると世の中がまた変わります。
パソコン、スマホの次の一大プロダクトが5Gの世の中になると出現すると思います。

それが何なのかは私も分かりません。ただ、ちょっとでも作ってみたいモノがあるなら、今から来るべき5Gの世界に備えるべきではないでしょうか?

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/サービスのためのIoTプロダクトのつくり方-野々上-仁/dp/4822259315/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1546675238&sr=8-1&keywords=IoT%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%80%E3%82%AF%E3%83%88

 

参考図書:『サービスのためのIoTプロダクトのつくり方』
発行年月:2017年8月
著者:野々上仁(ののがみ・じん)
発行所:日経BP社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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