困っても困らない?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第19回

~『道をひらく』(松下幸之助)を読んで学んだこと~

 

心の如意棒がカチカチになっていませんか?

 

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

松下翁の本は、大晦日の前回も引用したので迷いましたが、やはり、新年にご紹介する本として本書がふさわしいと思い、松下翁にはもう一度ご登場いただくことにしました。本書は一つ一つの文章が短いため、隙間時間にもサクッと読めますし、読みたいところを読むにも便利です。

エデンの園ではありませんが、何も困難がない平々凡々とした日々は、それはそれで幸せでしょうし、みなそれを求めて日々努力しているのでしょうけれども、実際にその境遇に到達してしまうと、面白くないし良くないのかもしれません。今回引用した前半部分を読んでそう感じました。

読書オタクは、オタクなのに移動が多い変なオタクですが、一つの場所に留まっているのをあまり良いことであると考えていません。留まることは安定を意味しますが、一方で停滞をも意味すると考えているからです。水も流れているから清潔であって、溜まっている水は腐ります。

若干話がそれてきましたので、そろそろ松下翁のことばを以下に引用します。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E5%B1%B1%E3%81%AE%E9%81%93-%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0-%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89-%E6%97%85%E8%A1%8C-%E6%97%A5%E3%81%AE%E5%87%BA-%E9%A2%A8%E6%99%AF-%E8%87%AA%E7%84%B6-%E6%9B%B2%E7%B7%9A-1556177/

 

【この本のポイント!】

岐路(きろ)にたちつつ

動物園の動物は、食べる不安は何もない。他の動物から危害を加えられる心配も何もない。きまった時間に、いろいろと栄養ある食べ物が与えられ、保護されたオリのなかで、ねそべり、アクビをし、ゆうゆうたるものである。
しかしそれで彼らは喜んでいるだろうか。その心はわからないけれども、それでも彼らが、身の危険にさらされながらも、果てしない原野をかけめぐっているときのしあわせを、時に心に浮かべているような気もするのである。
おたがいに、いっさい何の不安もなく、危険もなければ心配もなく、したがって苦心する必要もなければ努力する必要もない。そんな境遇(きょうぐう)にあこがれることがしばしばある。しかしはたしてその境遇から力強い生きがいが生まれるだろうか。
やはり次々と困難に直面し、右すべきか左すべきかの不安な岐路(きろ)にたちつつも、あらゆる力を傾け、生命(いのち)をかけてそれを切りぬけてゆく――そこにこそ人間としていちばん充実した張りのある生活があるともいえよう。
困難に心が弱くなったとき、こういうこともまた考えたい。

 

困っても困らない

ひろい世間である。長い人生である。その世間、その人生には、困難なこと、難儀なこと、苦しいこと、つらいこと、いろいろとある。程度の差こそあれだれにでもある。自分だけではない。
そんなときに、どう考えるか、どう処置(しょち)するか、それによって、その人の幸不幸、飛躍か後退かがきまるといえる。困ったことだ、どうしよう、どうしようもない、そう考え出せば、心が次第にせまくなり、せっかくの出る知恵も出なくなる。今まで楽々と考えておったことでも、それがなかなか思いつかなくなってくるのである。とどのつまりは、原因も責任もすべて他に転嫁して、不満で心が暗くなり、不平でわが身を傷つける。
断じて行えば、鬼神でもこれを避けるという。困難を困難とせず、思いを新たに、決意をかたく歩めば、困難がかえって飛躍の土台石となるのである。要は考え方である。決意である。困っても困らないことである。
人間の心というものは、孫悟空(そんごくう)の如意棒(にょいぼう)のように、まことに伸縮自在である。その自在な心で、困難なときにこそ、かえってみずからの夢を開拓(かいたく)するという力強い道を歩みたい。

『道をひらく』P110~P113

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E5%B9%B8%E7%A6%8F-%E5%96%9C%E3%81%B3-%E7%B4%94%E7%B2%8B%E3%81%AA%E7%A9%BA%E6%B0%97-%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3-%E3%82%A8%E3%82%A2-%E8%87%AA%E7%84%B6-%E5%91%BC%E5%90%B8-1866081/

 

松下翁は、むやみに安住することは、オリの中にいる動物と同じで、決して好ましいことではないのではないか、と言っています。危険を冒さなければ成長はしないし、成長しなければ明るい未来はないということでしょうか。

最初は今回引用した部分の前半部分のみを引用するつもりでしたが、この本の良いところは、1つの文章が2ページに収まる短編集であるにもかかわらず、前後の内容が連動していることです。今回の引用箇所も例外なく、気になるところでしたので、引き続き引用することにしました。

私は仕事柄か、いろんな会社の社長さんとお話しする機会も多いのですが、結構多いのが、最初は、なんでこんな仕事をやらなきゃいけないんだ。こんな仕事、引き受けなければよかった。と思っていた仕事が、実は世の中でとても需要があることがわかり、事業をそちらへ乗り換えてた結果、今の自分がある。というサクセスストーリーです。

 


画像引用元:
https://pixabay.com/ja/chm%C3%AD%C5%99%C3%AD-%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%83%9D-%E8%8A%B1-%E6%A4%8D%E7%89%A9-%E7%B7%91-%E5%85%89-%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%A0-%E8%89%B2%E3%81%82%E3%81%9B%E3%81%9F-339616/

 

つまり、引用の後半部分にあるように、彼らとしても最初は困ったのでしょうが、発想の転換をした結果、困らなくなった。というわけです。読者のみなさんにも少なからずこのような経験があるのではないかと思います。

いずれとしましても、本書は、パナソニックをゼロから起こして、戦争や倒産の危機を何度も乗り越えてきた人の言葉としてとても重みを感じます。我々も、松下翁だからできたんだよ。と言わずに、素直に見習いたいですね。

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E9%81%93%E3%82%92%E3%81%B2%E3%82%89%E3%81%8F-%E6%9D%BE%E4%B8%8B-%E5%B9%B8%E4%B9%8B%E5%8A%A9/dp/4569534074/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1483685355&sr=1-1&keywords=%E9%81%93%E3%82%92%E3%81%B2%E3%82%89%E3%81%8F

 

参考図書:『道をひらく』
発行年月:1968年5月
著者:松下幸之助(まつした・こうのすけ)
発行所:PHP研究所

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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