情報の食べ過ぎに注意しましょう!

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第10回
~『第一感』(マルコム・グラッドウェル)を読んで学んだこと~

 

情報は多ければ多いほど良いというわけではない

 

何か重要なことを決断するとき、みなさんはどうしますか?信頼できる人に相談しますか?友人知人の意見に耳を傾けますか?あるいは、関連する書籍を読み漁りますか?

よく言われるのは、何かを判断するとき、それが重大なことであればあるほど多くの情報を集めてから決めるべきで、でなければ判断を誤りますよということです。正しい判断をする確率を上げるためには、どれだけ多くの情報を多方面の角度からの情報を集められるかにかかっていますよと。

 

ただ、これは本当に正しいのでしょうか?

端的にいえば、情報収集の大事さを強調する人や書籍が多いような気がしますが、そんな方にはぜひこの本を読んでいただきたいです。

 

画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88-%E9%A0%AD-%E6%9C%AC%E6%A3%9A-%E7%9F%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99-%E6%83%85%E5%A0%B1-%E5%8F%8E%E9%9B%86-%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AA-1632912/

 

【この本のポイント!】

情報過多が判断の邪魔をする

(前略)何かを判断する際、情報は多いほど適切な判断を下せると、みんな当たり前のように思い込んでいるからだ。(中略)余計な情報は必ずしも有利に働かないと言いう。実際、複雑な現象の下に隠れているサインを見つけるには、少しのことがわかればよいのだ。

(中略)実は余計な情報はただ無用なだけでなく、有害でもある。問題をややこしくするからだ。(中略)十分に根拠があると思えるような情報があるのに、それを無視したほうが正しく判断できると言われても、おいそれとは受け入れられない。

(中略)「情報が増えるほど、判断の正確さに対する自信は実際と比べて不釣り合いなほど高くなっていった」救急室の医者と同じだ。彼らが必要以上に情報を集めて検討したのは自信を持つためだった。人の命がかかっている以上、自信を持つ必要があったのだ。だが皮肉なもので、自信を持とうとすればするほど、正確な判断ができなくなる。頭の中にある詰め込みすぎの計算式に情報を追加しすぎて、ますます混乱してしまう。

(中略)ここには大切な教訓が二つあるように思う。まず、正しく判断するには熟考と直感的な思考のバランスが必要だ。(中略)時間があり、パソコンの助けを借りることができ、やるべきことがはっきりしているときは、熟考は素晴らしい手段であり、こうして分析した結果は瞬間的な認知が活躍できる場を用意してくれる。

二つ目は、優れた判断には情報の節約が欠かせないということだ。ジョン・ゴットマンは複雑な問題をごく簡単な要素に切り詰めて、ひどく複雑な夫婦関係の問題にも明確で基本的なパターンがあることを示してみせた。リー・ゴールドマンの研究を見ると、このようなパターンを拾う際、情報は少ないほうがうまくいくことがわかる。判断する人に情報を与えすぎるとサインを拾いにくくなることを彼は証明してみせた。正しい判断を下すには情報の編集が必要なのだ。

状況を輪切りするとき、すなわちパターン認識し、瞬時に判断するとき、私たちは無意識のうちにこの編集作業をしている。元美術館長のトマス・ホービングが初めてクロース像を見たとき、最初に目を引いたのは見た目の新しさだった。美術史家のフェデリコ・ゼリは直感的に指の爪を見た。二人とも彫像の外見にかんするほかのさまざまな事柄は無視して、知りたいことをすべて教えてくれる特徴に注目した。情報編集する能力が無い、何を編集すればよいかわからない、編集作業を許されていないといった場合は、結果として瞬時の判断力が落ちる。

(中略)一般に経済学では、選択肢が多いほうが客が商品を買う確率が高くなると言われている。好みに合うジャムを見つけやすいからだ。

だが結果はその反対であった。選択肢が六種類のときはコーナーに立ち寄った客の30%がジャムを買った。一方、種類が多いときにジャムを買った客は3%だった。なぜだろう?ジャムを買うかどうかは瞬間的に判断するからだ。私たちは直感的にこのジャムが欲しいと思う。選択肢が多すぎると、無意識の処理能力を超えて、麻痺してしまうのだ。

瞬時の判断を瞬時に下せるのは、情報が少ないからだ。瞬時の判断を邪魔したくなければ、情報を減らすことだ。
バン・ライパーはこのことをよく理解していた。彼と彼の部下も分析をしたが、それは戦争が始まる前だ。いったん戦争が始まると、彼は部下に余計な情報を与えすぎないようにした。会議は短く切り上げ、本部と戦場の指揮官とのやりとりも制限した。瞬間的に判断できる環境を整えようとしたのだ。(中略)「最近の戦略家の中にはもっと情報を集めて、すべてを見わたすことができれば、負けるはずがない言う者もいる。ポールはいつもこう言っている『チェス盤を見てみろ。敵の動きはすべてわかる。でも勝てる保証はあるか?そんなものはない。敵の考えまではわからんのだ』。司令官がすべてを知ろうとすればするほど、その考えにとらわれて身動きができなくなる。だが、すべてわかることなどありえない」

『第一感』P141~P148

 

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ところで、私は自分が情報収集することが苦手だから批判めいたことを書いているわけではありません(汗)。その重要性については理解していますが、情報収集と準備することは比例の関係だと思っているため、準備に時間をかけるよりは、まずやってみてそこから学んだ方が早いのではと思っているだけです。

また、上記引用部分にも書かれているとおり、著者も情報収集自体がダメだと言っているわけではありません。情報は適切に取得することが大事であると言っています。

私が思うに、むやみやたらに情報を詰め込むことは、暴飲暴食で体調を崩すかの如く害があります。このように食べ過ぎ飲み過ぎはいけませんが、一方で、まったくあるいはほとんど情報収集しないことは、ダイエットだからといって何も食べないと身体によくないように、不要な失敗を招くことになります。

 

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私はこの本のポイントは2つあると思います。

 

一つ目は、何か新しい事を始める前は期間と範囲を決めて情報収集をする必要があるということです。ダラダラと情報収集をすることは、準備が整っていないからできないという言い訳と何ら変わりがありませんし、範囲を絞ることは勇気がいることかもしれませんが、たとえ広範囲の情報を取得しても結局消化不良になりますので時間の無駄ですし、まずやってからまた期間を設けて不足していると思う情報を集めれば良いと思います。

二つ目は、いざことが始まったらできる限り目の前のことに集中すべきということです。たとえば相手と試合をする前に相手のことを十分に調べ尽くしてから勝負に挑むことは良いことですが、実際に試合が始まったらあれこれ考えていても仕方がありません。なぜなら、事前に調べたことはその情報量が多ければ多いほど体系的かつ系列立てて相手のことを教えてくれますが、それはあくまで過去のことであり、実際の試合で相手がその通りにしてくるとは限りません。当日の体調や天気、気分や会場の雰囲気などによりこれまでとはまったく違ったやり方をしてくるかもしれません。大事なのは、相手のことは十分調べたが、それでもまったく違うことをしてくるかもしれないという心構えと気概で臨むことです。これはビジネスにおける交渉でも同じだと思います。

このように考えると、事前に調査し、準備をすることは大事ですが、それよりももっと大事なのは、何が起こっても動じない心構えや気概を身に着けることであり、所詮はこれまでやってきた以上のことは出せないと腹をくくることだと思います。そのための体調管理ももちろん大事です。

また、長期的にそれを裏付けるための知識や経験を身に着けることも欠かせません。これはプロとしての直感(この本には書いていませんが、直感=第一感だと理解しています。)を身に着けるつけることにつながるからです。

 

みなさんも適度に情報を食べて情報飽食時代を乗り切りましょう!

 

一介の読書オタクより

 

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参考図書:·第一感
発行年月:2006年3月
著者:マルコム・グラッドウェル(Malcolm Gladwell)
訳者:沢田博(さわだ・ひろし)
訳者:阿部尚美(あべ・なおみ)
発行所:光文社

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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