失敗を恐れず成功のネタを増やしましょう!
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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第42回
~『わが友 本田宗一郎』(井深大著)を読んで学んだこと~
失敗をすればするほど、成功のヒントが得られる。
本書は、ソニーの創業者である井深大さんが、友人でホンダの創業者である本田宗一郎さんとのエピソードについて語ったものです。
機械系の革新企業であるホンダと、電気系の革新企業であるソニーのそれぞれトップが友人同士であったというのも興味深いですが、なおかつその親交は本田さんが亡くなるまで約40年にわたって続いたというのです。
業界は違うとはいえ、ホンダとソニーは、それぞれ20世紀の日本を代表する革新企業で、井深さんいわく、自由奔放で豪快な本田さんとは性格が真反対だったらしいのですが、常に不可能と思えることにチャレンジすることで大きく成長してきた企業のトップ同士、何か通じるものがあったのでしょう。
本書は井深さんを語り手に、本田さんのエピソードがふんだんに盛り込まれています。よって、ソニーとホンダそれぞれの会社について、また、ソニーとホンダとの関係について、そして、井深さんと本田さんとの関係について、まんべんなく触れられており、この2社と両人についての関係がよくわかる内容となっております。
彼らが仕事をするうえで、いかにチャレンジすることにこだわってきたか、それがよくわかる一節がありますので、下記に引用します。
画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E6%9C%A8%E6%9D%90-%E6%9D%90%E6%96%99-%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%88-%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3-%E6%9C%A8%E3%81%AE%E5%B9%B9-%E6%A8%B9%E7%9A%AE-%E5%8F%A4%E3%81%84-%E3%83%91%E3%82%BA%E3%83%AB-2313956/
【この本のポイント!】
“材料”がなければ、ひらめきも生まれない
しかし、ただ楽しくやっていれば、いいアイデアが出てくるものではないということも、また確かです。本田さんにしても、たとえば、オートバイの大革命をもたらした高速回転のエンジンにしても、「世界に負けないものをつくろう」という苦しみの中から生まれています。(中略)
それに、アイデアやひらめきというものは、まったくの無からは生まれてきません。やはり、それなりの“材料”がなければ、何も出てこないのです。
以前、本田さんから「牛の角はどうやってついているか、知っているかい」と聞かれたことがあります。雄の牛には角がはえているということは、私でも知っていますが、角が前か耳が前かと聞かれて、私も目をシロクロさせてしまいました。本田さんは絵を描きながら、得意になって説明してくれましたが、じつは牛の角のことを知らないのは私だけでなく、ふだん牛をよく目にしている農村の若者たちでさえ「さあ、どうやってついていたかなあ」とわからないのだそうです。結局、本田さんがいろいろな人に聞いてまわったところ、ちゃんと答えられたのは、画家の人たちだけだったということでした。
この牛の話で本田さんが言いたかったのは、ふだんからものをよく見ることがたいせつなのだということでしょう。私たちは、目をあけてものを見ているようでいて、案外、見ていないことが多い。これでは創意工夫などできっこない。というのが本田さんお得意の説でした。
また、本田さんにしても私にしても、ひとつのことを成功させるために、ずいぶん失敗をくり返しています。その失敗のひとつひとつが、アイデアやひらめきを生む“材料”になってくれるのです。
本田さんは、くり返しくり返し、失敗のだいじさを説いていました。最後の対談のときでも、「何千でもいいから、お釈迦になってもいいから、つくることだね。もったいないようだけれど、捨てることが、一番巧妙な方法だね。捨てることを惜しんでいる奴は、いつまでたってもできないね。」と、失敗のすすめを強調されていました。右脳型人間の典型のような本田さんだからこそ、失敗のたいせつさがよくわかっていたのでしょう。
『わが友 本田宗一郎』P131~134
画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E6%95%99%E8%82%B2-%E8%89%AF%E3%81%84%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A2-%E9%85%8D%E5%88%97-%E5%AD%A6%E6%A0%A1-548105/
ホンダとソニー、本田宗一郎と井深大、今となっては、それぞれ成功した会社、成功者としての評価が確立されており、過去の成功ばかりがクローズアップされがちですが、彼らからすれば、成功したのはほんの一部であり、その陰にはあまたの失敗が積み重ねられているわけで、失敗を恐れていては、絶対に成功しないということです。
読書好きの井深さんに対して、本田さんの場合はほとんど本を読まなかったらしいのですが、2人とも仕事に打ち込み、試行錯誤しながら失敗をくり返して、そこから学びながら正解に辿り着いていくという仕事のスタイルは共通していました。
よく本を読まない奴はダメだという意見を耳にします。私も読書オタクとして賛成せざるを得ませんが(笑)、読書をしない人は人間失格だとか、まったく評価できないなどという過激な意見には賛同しかねます。というのも、読書など、所詮は外国語を操る能力と同じで、目的を達成するためのツールに過ぎないからです。ですので、重視するのは構いませんし、基本能力として備えておきなさいと言うのは理解できますが、絶対視するのは危険だと感じます。
読書習慣がなくても、外国語能力がなくても活躍し、尊敬されている人は大勢います。このような人たちは、本田さんや井深さんのように、仕事に打ち込み、日々の失敗にもめげず、チャレンジし続けて自分のスタイルを貫き通すことで、真のプロフェッショナルとして尊敬されているのです。
あともう一つ、この2人というか、この2社の共通点として以下の引用箇所をご紹介します。
【この本のポイント!】
経営者としては、ふたりとも失格
また、素人ということでは、ふたりとも、経営についてはまったくの素人です。(中略)
長いつきあいのなかでも、ふたりのあいだでは経営の話なんていうのは、まず出てきませんでした。ふたりとも経営者としては失格だったのですが、ご存じのように、それぞれ藤沢武夫、盛田昭夫といういい相手がいたからこそ、ここまでやってこられたわけです。
本田さんがいつも研究所にいて、本社にはほとんど顔を出さず、ハンコから何から会社のことはすべて藤沢さんにまかせておいたというのは有名な話ですが、私も、そろばん勘定などめんどうなことは、すべて盛田君がやってくれました。自分の夢を実現することだけを考えて、一生懸命やっていればいい。そういう状態をつくってくれる人たちに恵まれていたという点では、私たちふたりはほんとうに幸せだったと思います。
『わが友 本田宗一郎』P29~32
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E5%8F%8B%E4%BA%BA%E5%90%8C%E5%A3%AB-%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC-%E3%82%BD%E3%83%AB-%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%81-%E5%8F%8B%E6%83%85-%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88-2288329/
つまり、本田さんも井深さんも技術者であって経営者ではないため、経営に強いパートナーがいたからこそ成功できたという点です。ホンダは藤沢武夫さんという経営のプロが、ソニーは盛田昭夫さんという技術者でありながら営業や資金繰りの面倒を見てくれたナンバー2がいたお蔭で、本田さんも井深さんもものづくりに没頭することができたということなのです。
これは非常に興味深い共通点だと思います。それぞれ技術者がトップで、経営者がナンバー2なのです。あくまで技術力をもって新しい製品を世の中に送り出し、世の中をより良くすることを第一としており、経営はあくまでそのサポートに過ぎないと。ものづくり企業のお手本のような体制だと思います。(ただし、読書オタクとして、これが一番良いなどと大それたことを言うつもりはありません。数ある答えの中のひとつであると捉えています。)
本書に限らず、本田さんと井深さんに関する本を読んだことがありますが、彼らがことあるごとに藤沢さんと盛田さんに対する感謝を述べているのも頷けますね。
やはり、何人も誰かに支えられているということで。逆に言えば、パートナーや支えてくれた人たちに感謝したからこそ、彼らは成功したのかもしれませんね。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%8F%E3%81%8C%E5%8F%8B-%E6%9C%AC%E7%94%B0%E5%AE%97%E4%B8%80%E9%83%8E-GOMA-BOOKS%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E4%BA%95%E6%B7%B1-%E5%A4%A7/dp/4777116131/ref=sr_1_fkmr1_1?ie=UTF8&qid=1497537798&sr=8-1-fkmr1&keywords=%E3%82%8F%E3%81%8C%E5%8F%8B%E3%80%80%E6%9C%AC%E7%94%B0%E5%AE%97%E4%B8%80%E9%83%8E+2010
参考図書:『わが友 本田宗一郎』
発行年月:2010年8月
著者:井深大(いぶか・まさる)
発行所:ごま書房新社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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