みなさんは食える人と食えない人のどちらですか?
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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第63回
~『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』(松尾昭仁著)を読んで学んだこと~
食えない人でもあきらめず、少しずつ意識改革をしましょう。
日本では多くの人がサラリーマンとして会社などの組織に所属し、勤めていますが、最近は個人事業主として、個人やフリーランスで働く人が増えていると聞きます。そして、この傾向は、今後ますます進んでいくでしょう。
ただ、独立すると、毎月自動的にお金が振り込んでくる生活から、請求書を発行し、相手が実際にお金を払ってくれないと、お金をもらいない世界に変わります。サラリーマン時代は、一ヶ月って結構長いな、給料日はまだかな。と思っていても、実際に自分でやり始めてみると、一ヶ月なんてあっという間だな。もう一ヶ月も経ってしまった。と思う人が多いと思います。
このとき、毎月定期的に収入を得られるような契約や、そこまで安定的でなくても、お客様の数が多く、常に売り上げが経って利益が上がるような状態であれば大丈夫ですが、ほとんどの人の場合は、起業したばかりはそんなにうまくいかず、売上がないか売り上げが経っても利益がほとんどないかで、サラリーマン時代にもらっていた自分の給料すら稼げない現実を目の当たりにすることになると思います。
サラリーマン時代は、たとえいくらの給料をもらっていたとしても、多くの人はその少なさを嘆いていたはずです。人間というのは自分のことを棚に上げて相手のことを非難(この場合はもらえる給料の少なさ)するものなので仕方がありませんが、いずれにせよ、いざ独立してみると、それと同じ額を自力で稼ぐことがいかに大変かを実感し、途方に暮れる場合がほととんどでしょう。
本書は、これから起業する人に向けて書かれた本ですが、起業家に向いているか向いていないか、逆に、もし本書を読んで自分は向いていないと思ったとしても、どうしても将来は起業したいと考えている人は、本書を読んでまずは自分の意識を変えるところから始めてみてはいかがでしょうか?
それでは、前置きはこれくらいにして、本書で特に気になった箇所を以下に引用します。
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E3%82%B0%E3%82%A8%E3%83%AB%E5%85%AC%E5%9C%92-%E3%82%AC%E3%82%A6%E3%83%87%E3%82%A3-%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%8A-%E3%83%A2%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%82%AF-%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E3%82%BA-%E7%B7%91-5239/
【この本のポイント!】
食える人は「行列を疑う」
食えない人は「行列に並ぶ」
(中略)行列を見ただけで「おいしいに違いない」と安易に判断し、自らも並んでしまうような人は起業には向いていません。経営者の視点に欠けるからです。
起業で成功する人は、こうした行列を見て、なぜ行列ができているのかを考え、自分のビジネスに応用できないか探ります。
たとえば、わざと行列をつくって話題づくりをしているのではないかと疑います。つまり、経営戦略としてわざと行列を演出しているのではないか、と考えるわけです。
実際、ある人気シュークリーム店は、シューをゆっくり生地に入れてわざわざ時間を稼いで行列をつくっていたと言われています。
『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』P22~25
食える人は「できないことは切り捨てる」
食えない人は「平均点を上げようとする」
(中略)「外注したり人を雇ったりするのは、お金がもったいない」と考える人もいますが、成功する起業家は、「苦手なことにかけている時間のほうがもったいない」という発想をするのです。
有名起業家の著者の多くは、本を書いている時間がもったいないからといって、ライターを使い本にしたい内容を取材してもらい、原稿を仕上げています。
自分で原稿を書こうと思えば、本業をやりながらなので、2~3か月はかかるでしょう。文章を書くのに慣れていない人であれば、半年や1年かかることもあります。印税がもらえるからといっても、売れずに初版でおわってしまえば、数十万円程度しか入ってきません。時間の投資対効果は悪いと言わざるを得ません。
しかし、伝えるべきコンテンツさえあれば、ライターに書いてもらったほうが、速く、読みやすい原稿に仕上がります。何よりも貴重な時間とエネルギーを本業に注ぐことができます。(中略)
どこに自分の時間を使うのかを常に考えているのが、起業で成功する人なのです。
『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』P36~38
食える人は「他人におごって喜ぶ」
食えない人は「他人におごられて喜ぶ」
(中略)成功しない人は、他人におごってもらって喜びます。ひどい場合、おごってもらったことさえ忘れてしまいます。
一方、起業して成功する人は他人におごって喜びます。そして、おごったこと自体を忘れていることさえあります。
しかし、おごったあとに、「お世話になったから」と言って、仕事やお客様を紹介してもらえることは少なくありません。結果的におごった金額が5倍、10倍になって返ってくる場合もあるのです。
「返報性の原理」という有名な法則がありますが、人間は自分によくしてもらったら、相手に対してお返しをしたくなるものなのです。
成功する起業家は、世の中が返報性の原理で成り立っていることを理解しているから、おごることを喜べるのです。
人脈に関しても同じことが言えます。
自分の人脈を囲い込む人がいる一方で、成功する起業家は、積極的に自分の人脈を他の人に紹介します。
私も、著者候補の人を出版社の編集者に紹介することもあれば、「この2人は気が合いそうだ」「お互いのビジネスを補完できるのではないか」と思えば、一席もうけてマッチングすることもあります。
マッチングがうまくいけば、紹介した人たちは喜んでくれます。そして、「松尾さんには、いい人を紹介してもらったから」と、反対に私のクライアントとなるような人を紹介してくれたり、新しい仕事を紹介してくれたりするものです。
人間関係も「返報性の原理」で成り立っているので、人脈を提供することで、さらにいい人脈となって返ってくるのです。
『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』P64~66
食える人は「借金は信用だと考える」
食えない人は「借金は悪だと考える」
(中略)銀行や投資家から「この事業はうまくいきそうだ」と思ってもらえるからこそ、お金を出してもらえるのです。見込みのない事業であれば、お金を借りることはできません。
知人の起業家のなかには、お金があるときにあえて銀行から借りる人もいます。銀行はお金を融資して利子をとる商売ですから、優良な会社にはどんどんお金を貸したいと思っています。
だから、銀行からお金を借りて、着々と返済していく。そうすれば、銀行に恩を売ることができて信用枠も拡大するので、今度はより大きな金額の資金を調達することも可能になります。
「うちの会社は無借金経営だから」と胸を張っている起業家をよく見かけます。そういう会社は銀行からの融資の誘いも断ってしまうので、いざお金が必要になって融資をお願いしたときは、銀行は救いの手を差し伸べてくれません。
起業家は銀行から借金をできるようになって、ようやく一人前といえます。実際に銀行から借りるかどうかはケースバイケースですが、少なくとも借金は悪だと決めつけているかぎり、事業を大きくするのは難しいでしょう。(中略)
起業するときに借金をするメリットは、もうひとつあります。
それは、起業家としての覚悟が決まること。(中略)
経営者にとって一番の仕事は、資金繰り。お金をうまく回すには、大きくわけて2つしか方法はありません。ひとつは売上をあげる。もうひとつはお金を借りること(正確には他にもありますが)。借金をすれば、ストレスもたまります。そういう意味でも、起業家は覚悟がないと続けられないのです。
『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』P67~70
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%8A-%E3%82%B0%E3%82%A8%E3%83%AB%E5%85%AC%E5%9C%92-%EF%BC%88parc-%E3%82%AC%E3%82%A6%E3%83%87%E3%82%A3-2239434/
これらの引用箇所を通して学ぶことができるのは、世の中で起きていることには必ず裏があるということ、ビジネスで大事なのは、何よりも信用であるということ。そして、自分の力を出し惜しみしてはいけないということです。
何か世の中を動かしたり、注目を浴びたりするような現象の裏には、必ずそうなった理由があります。もっといえば、ほとんどの場合は、それを意図的に仕掛けた仕掛け人(個人の場合もありますし、組織の場合もあります)がいます。
先程の引用に出てきた行列はその顕著な例で、著者も言うとおり、成功する起業家は飲食店の行列を見てもすぐに鵜呑みにはしないのでしょうが、少なくとも、そんな彼らをも注目させることには成功しています。
どのような料理、どのような製品、どのようなサービスであっても、口コミやネットの評価をいくら見たところで、結局は自分で体験してみなければその良し悪しはわかりません。ただ、そもそも論として、いくら良い料理、製品、サービスであっても、体験してもらう以前に、知ってもらわなければどうにもなりません。
他方で、ビジネスはほぼ信用で成り立っているのも確かです。ここでは銀行からお金を借りることを例にあげていますが、実は最近も私の知人の経営者が、本書で書かれているのと同じように、無借金経営であることを誇り、借金したくないと言っていました。そこで、なぜ借金したくないのですか?と聞いたところ、銀行に貸しをつくりたくないとのことでした。私は思わず、それは逆ではありませんか?向こうが借りて欲しいと言ってきているのであれば、借りることで向こうに貸しをつくることになるのではありませんか?と答えました。
話を戻しますが、最近は、ネットマーケティングに長けた若い経営者が多く、私が知っている人たちでも、若い人ほどお客様を集めることや仕事を取って来ることに長けている人が多いような気がします。一方で、仕事を取り過ぎたことでひとつひとつのクオリティーが下がったり、問い合わせが多過ぎて回答しきれず、問い合わせを放ったらかしにしているというのも聞いています。これでは、今は勢いに任せて順調かもしれませんが、この状態を続けているようであれば、一時的にお金を稼ぐことはできても、信用を無くして長くビジネスを続けることは難しいと思います。
あと、最後に強調しておきたいのは、自分の力を出し惜しみしない方がいいということです。よく、自分のノウハウを教えることは、自分がそのビジネスをしなくなることと同義なので、教えることは絶対にない。というようなことを言う人に会います。もちろん、それはこれまで培ってきた経験からくる自負からくるのでしょうが、もしその人が自分のノウハウを本にまとめて他人に紹介したとしても、ほとんどの人はそこまでの行動力はありませんし、そもそも、その人自身も自分で理解できていないようなノウハウも必ずありますので、完全にコピーすることはできません。むしろ、ノウハウを出し惜しみすることで、この程度の自分物か、と軽く見られる恐れの方が高いです。また、自分のノウハウをすべて公開することで、自分自身が危機感を感じ、さらに自分の実力を上げざるを得なくなるという、自分に対する良いプレッシャーにもなります。
先程の引用箇所では、自分の人脈の紹介を惜しむなとも書いてありましたが、これも実力を出し惜しみするなということと同義だと思います。世の中には、人や組織の間の中を仲介する。といえば聞こえはいいですが、ただ単に人を紹介するだけで、そこでビジネスが発生したらコミッションをもらうというブローカーみたいな人も良く見かけますが、こういう人は、気付くといつの間に消えています。そうでなくとも、一人で細々とやっている人がほとんどです。このようにあまり上手くいっていないといえるのは、自分の実力を出し惜しみしているのが原因でしょう。
いずれにせよ、読書オタクとしては、独立したい人もそうでない人も、ぜひ本書を読んで、今までとは違った視点を身に着けてもらいたいです。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/1%E4%B8%87%E4%BA%BA%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%81%A6%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E8%B5%B7%E6%A5%AD%E3%81%97%E3%81%A6%E9%A3%9F%E3%81%88%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%83%BB%E9%A3%9F%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%84%E4%BA%BA-%E6%9D%BE%E5%B0%BE-%E6%98%AD%E4%BB%81/dp/4534053916/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1510393049&sr=1-1&keywords=%E8%B5%B7%E6%A5%AD%E3%81%97%E3%81%A6%E9%A3%9F%E3%81%88%E3%82%8B%E4%BA%BA+%E9%A3%9F%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%84%E4%BA%BA
参考図書:『1万人を見てわかった 起業して食える人・食えない人』
発行年月:2016年6月
著者:松尾昭仁(まつお・あきひと)
発行所:日本実業出版社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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