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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第118回

~『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由』(塚崎公義著)を読んで学んだこと~

 

やたらめったら倹約すればいいわけではないし、環境をなおざりにしてお金を浪費するべきでもない。

 

日本の先行きについて不安ばかり口にする人がいます。先日何かで読んだのですが、日本人は悲観的に感じたり、不安を感じるセンサー?的な細胞だか遺伝子だかが他の民族より多いそうです。理由は、日本は昔から自然災害が多い国なので、世界の他の地域と比べて、より慎重で注意深い人が生き残りやすかった。という話でした。

何だか説得力がありそうで無さそうな、若干いい加減な話のような気もしますが、今の日本を見る限り一理あるなと感じた人は少なくないと思います。

現在は長らく経済が停滞していると言われていますが、これは単にバブル崩壊後の反動や少子高齢化ということだけが原因ではないように感じています。日本人の性格というか、マインドが少なからず関係していると思いますし、中国やアメリカの経済が好調なのは、やはり人々がモノを買っているからではないか?最近の日本人はモノを買わず、インバウンドで来た爆買い外国人がモノを買ってくれていることで景気を下支えしてくれているのではないか?とさえ感じています。

この辺りを、本書の下記引用箇所は上手に説明してくれていますので、以下に引用致します。

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/秋-秋を葉します-葉-真の葉-秋の色-自然-黄金の秋-カラフル-1655915/

 

【この本のポイント!】

◆その後の長期不振の真因は「勤勉と節約」による「合成の誤謬」

問題は、金融危機の後も不況が長く続いたことです。その理由については、さまざまな主張がなされていますが(中略)「日本人が勤勉と節約に励んだから」だと考えています。

豊かになろうとするならば、勤勉と節約は「正しい」ことなのですが、皆が正しいことをすると皆が酷い目に遭うことがあるのです。これを「合成の誤謬(解説参照)」と呼びます。

高度成長期には、人々が勤勉に働いて多くのモノを作り、節約して少ないモノで暮らしました(中略)。そこで、企業が工場建設のために鉄やセメントや設備機械などを調達することができたのです。資金面でも、人々が勤勉に働いて給料を稼ぎ、節約して残りを貯金したから銀行に預金が集まり、それを企業が設備投資資金として借りることができたのです。

しかし、高度成長が終わり、バブルが崩壊し、設備投資をする企業が減ると、モノが余るようになりました。人々はあいかわらず勤勉に働いて大量のモノを作りますし、人々はあいかわらず(むしろ従来以上に)節約してもモノを買いませんから、企業が設備投資用に買ってくれないと、モノが大量に余るのです。

余ったモノは輸出すれば良いのですが、輸出企業が海外から持ち帰ったドルを売るとドルが値下がりするので、輸出は無限には増やせません。

そこで、企業はモノを作るのを減らし、人を雇うのを減らしました。そうなると、失業が増えてしまいます。失業が増えると困るので、政府が景気対策(解説参照)を行いました。借金をして公共投資を行い、失業者を雇ったのです。

つまり、政府の財政赤字も「合成の誤謬」の結果なのです。(中略)

要するに「人々が勤勉に働いて倹約をしたから財政が赤字になった」というわけです。「我々が贅沢をしたツケを後世に残すのが財政赤字だ」と言う人がいますが、違うのですね(笑)。

ちなみに、「金は天下の回りもの」といいますが、お金は使っても消えません。経済というものは不思議なもので、皆が贅沢をすると誰も困らないのです。バブル期のサラリーマンたちが夜中までお酒を飲んでタクシーで帰るのは贅沢でしたが、それによってタクシーのドライバーが儲かり、タクシーのドライバーが儲かった金でテレビを買うとテレビメーカーが儲かり、テレビメーカーの株価が上がり、テレビメーカーの社員のボーナスが増え……という具合に、お金が天下を駆け回っていただけですから。当時は経済が絶好調で税収も上がり、財政も健全でした。

バブルが崩壊し、そうした流れが全面的に反転してしまったので、景気は悪くなり、人々は貧しくなり、財政も悪化した、というわけですね。

『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由』P22~P24

 


画像引用元:https://pixabay.com/ja/金塊-金-通貨-富-金融-貴金属-金のなる木-危機通貨-1744773/

 

「合成の誤謬」なんて難しい言葉を初めて聞きましたが、皆がお金を使うと皆豊かになり、皆が節約すると皆貧乏になるという話は、何となく実感できるかと思います。

そういう意味では、テレビや洗濯機、冷蔵庫などが無かった時代、電卓やパソコン、携帯電話やスマホなどが無かった時代は皆買いますからお金が世の中を巡りますが、それらが一巡したら買い替え需要しかないわけで、モノが売れなくなるのは当然です。

モノが売れないのはモノが手に入ったからであり、モノが要らなくなると余ったお金は貯めるかその分を使うかしかありませんが、貯めるのが趣味な人はともかく、ほとんどの人は貯めつつも使います。使うにしてもモノはもう足りているので、サービスに使い始めます。そのサービスの最たるものが「旅行」ではないかと思います。
そして、その旅行だって見方によっては無限にありますが、日本でも海外でもたいていの人は行く範囲が限られていますし、いつかは必ず飽きますので、今度は旅行以外のサービスに目が行きます。最近では健康という意味で、特にフィットネスジムがブームになっていますが、それ以外の体験やら奏している間に世の中が変わって新しいモノやサービスが出てくるので、それを使ってくということになるでしょうか?

自分でこのように書きながら気づきましたが、これはまさに爆買い外国人と同じですね。最初は日本に来て直接買った方が良いモノが安く手に入るということで爆買いをしましたが、それも一巡して、しかも、東京や大阪、京都などの有名どころの観光地は一通り行ってしまったので、今度はモノをあまり買わない旅行中心になる。といった具合です。

そもそも、今でこそ来日外国人が3000万人超えるような勢いですが、10年前なんて1000万人を超えられるように頑張りましょう!と言っていたくらいです。世の中はどのように変わるかわかりません。

ですので、本書に書かれていることは、経済の仕組みについて詳しくない私としては目から鱗の話ばかりでしたが、本書の内容を信じようが信じまいが時代は変化します。時代が変われば消えるモノがある一方で、新しく生まれるモノもあります。異なる時代には異なるチャンスが生まれるはずです。

とはいえ、環境問題が深刻さを増しているよう、みんながお金を使う方がハッピーになると言われても、やたらめったら消費すればいいというわけではありません。資源の節約は大切です。ただ、世の中に、お金を出したいと思えるようなモノやサービスがもっと増えれば、景気も良くなるし、それが結果的に環境に配慮する余裕にもつながるような気がします。

単に環境保護のために節約しろ、経済を良くするために金を使え!と言うだけでなく、できる限り多くの人が、こういう方向へ向かって努力するべきではないでしょうか?

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由-塚崎公義/dp/4309248845

 

参考図書:『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由』
発行年月:2018年9月
著者:塚崎公義(つかざき・きみよし)
発行所:河出書房

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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