みなさんは日々の小さな変化に注意を払っていますか?
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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第28回
~『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン)を読んで学んだこと~
利口なことは決して良いことではない
みなさんは、2匹のネズミと2人の小人が展開するこの有名な物語をご存知でしょうか?本書は、登場人物からすると、一見、子供の絵本のようですが、実際は危機に直面したときの対応について非常に示唆に富んだ内容となっており、利口になってしまったオトナこそ読むべき本だと思います。
私も最初は、タイトルはインパクトがあるものの、タイトルを読んだだけでは内容を推測することができないため、本書を買ってからだいぶ経ってからようやく読みました。すぐに読み終えましたが、もっと早く読んでおきたかったと多少後悔するくらい良い内容です。
すべてが啓発的内容となっていますが、私は特に下記引用部分が気に入りました。
画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%BA-%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9-%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%BA-%E9%A3%9F%E5%93%81-%E9%BB%84%E8%89%B2-%E4%B9%B3%E8%A3%BD%E5%93%81-%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%AF-575540/
【この本のポイント!】
(前略)二人は毎晩、チーズをおなかいっぱい食べてよたよたしながら家路につき、毎朝、自信満々で、きょうはもっとたくさん食べようと思いながらチーズのところに戻っていった。
こうした日々がかなりつづいた。
やがて二人は慢心するようになった。安心しきって、知らないうちに何かが進行していることに気づきもしなかった。
一方、スニッフとスカリーの日課は変わらなかった。毎朝、チーズ・ステーションCにつくと、あたりの匂いをかぎ、ひっかき、走りまわって、何か前日と変わったことはないか調べた。それから腰をおろして、おろして、チーズをかじった。
ところが、ある朝、行ってみると、チーズがなくなっていた。
二匹は驚かなかった。置いてあるチーズが毎日、だんだん少なくなっているのに気づいていたので、いずれなくなるだろうと覚悟していたし、どうすればいいかは本能でわかっていたのだ。
彼らは顔を見合わせると、一つに結んで首にかけていたランニング・シューズをとり、履いて紐を結んだ。
ネズミたちは事態をくわしく分析したりはしなかった。
彼らにとっては、問題も答えもはっきりしていた。チーズ・ステーションCの状況が変わったのだ。だから、自分たちも変わることにした。
二匹は迷路を見渡した。それから、スニッフが鼻をあげて匂いをかぎ、うなずいてみせると、スカリーが走りだした。スニッフも急いであとを追った。
新しいチーズを探しに出かけたのである。
同じ日、ヘムとホーはのんびりとチーズ・ステーションCにやってきた。二人は、毎日小さな変化が起きていることに注意をはらわなかったから、いつもどおりチーズがあるものと思っていた。
二人には青天の霹靂(へきれき)だった。
「なんてことだ!チーズがないじゃないか」ヘムは叫んだ。「チーズがないじゃないか。チーズがないぞ」そう言えばチーズが戻ってくるとでも思っているのか、大声でわめいた。
「チーズはどこへ消えた?」彼は声をあげた。
やがて、腰に手をあてると、顔を紅潮させ、声を張り上げて叫んだ。「こんなことがあっていいわけはない!」
ホーは信じられないというふうに、ただ頭を振るだけだった。彼もチーズがあるものと思いこんでいたのだ。ショックで凍りついたまま、彼は立ちつくしていた。こんばことになるとは思ってもいなかった。
(中略)
二人にとってチーズは重要だったから、これからどうすればいいのか決めるのに長い時間がかかった。しかし、考えついたのは、チーズ・ステーションCをよく調べて本当にチーズがなくなったのかどうか確かめることだけだった。
スニッフとスカリーはすぐさま次のチーズを探しにかかったのに、ヘムとホーはうろうろするばかりだった。
(後略)
『チーズはどこへ消えた?』P25~29
画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%BA-%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%82%B9-%E5%93%BA%E4%B9%B3%E5%8B%95%E7%89%A9-%E9%BD%A7%E6%AD%AF%E9%A1%9E-gnawer-%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88-%E5%8B%95%E7%89%A9-146418/
2匹のネズミは動物ですので、人間である2人の小人と違ってモノゴトを深く考える思考能力がありません。ただ、その分、普段から五感をフル活用して、常に緊張感をもって日々を過ごしていました。だから、最悪の事態に遭遇したときも、常日頃から準備ができていたため、特に惑うこともなく、ただちに次の行動を起こすことができました。
一方で、2人の小人は人間としての優れた頭脳は持ち合わせていますが、同時に人間としての欠点も持ち合わせています。過去の成功に過信し、日々の努力を怠ったうえに、もともとあった権利を失ったとき、その責任を他に転嫁するだけでなく、それを取り戻そうと必死になります。
何かの評価に利口だとかバカだとかいうコトバを使うのはあまり良いことではないですが、人間である小人の2人にとっては、当然ながら、動物である2匹のネズミは、単細胞で自分たちよりバカだと思っています。ただ、今回の対応を見る限りは、この小人たちの対応は、決して褒められるものではなく、第三者の立場から見たら愚か者そのものであるといえます。むしろ、彼らがバカにしているネズミたちの方が、非常にスマートで明快な頭脳を持ち合わせているように見えます。
本書は、2匹のネズミと2人の小人をとおして、人間の慢心を諫める内容となっています。通勤時間が長い人であれば、通勤中に読み終えてしまえるような分量ですので、ぜひみなさんも手に取って読んでみてください。きっと素晴らしい発見があると思います。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%B8%E6%B6%88%E3%81%88%E3%81%9F-%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC-%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/459403019X
参考図書:『チーズはどこへ消えた?』
発行年月:2000年11月
著者:スペンサー・ジョンソン(Spencer Johonson, M.D.)
訳者:門田美鈴(かどた・みすず)
発行所:扶桑社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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