みなさんはつき合う人をちゃんと選んでいますか?
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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第30回
~『自分を磨く読書術』(ハイブロー武蔵)を読んで学んだこと~
誰とでも仲良くすれば良いというわけではない
人間関係で一番悩ましいのは、その人がどのような人物かを見極めることです。これは善い人か悪い人かどうかを見極めることではありません。善い人、悪い人というのは定義があいまいですし、人によって評価が分かれます。そもそもそのようなことを決める権限は誰にもありませんし、無意味です。大事なことは、自分としてつき合うべき人か距離を置くべき人かどうかを見極めることです。
ただ、これを見極めることは並大抵のことではありません。なぜなら、人間はとても多面的な生き物で、どれだけその人と過ごした時間が長くても、どれだけその人と深くつき合っていても、パートナーのような関係ならまだしも、たいていは表面的なところ以外の部分を知ることはほぼ不可能だからです。
ですので、ほとんどの場合、相手のことをあまりわかっていない状態で、もう一歩踏み込んでつき合うか、一歩下がって距離を置くかの判断をしなければなりません。
一歩踏み込んでから自分が考えていたのと違うことを知り、こんなはずではなかったと後悔すること、一歩引いてから、あのときもっと相手のことを知る努力をすれば良かったと、このように後悔することはできるかぎり避けたいところです。
このようなことは、人生経験を積み重ねることで自然とわかってくることなのでしょうし、それで自分だけが被害をこうむるようであれば、それも一つの人生勉強で構わないと思います。ただ、その相手とつき合うかつき合わないという自分の判断で、できる限り周りの人に迷惑をかけないようにするためには、やはり、できるだけ客観的な視点が必要だと常々思っていました。
本書の下記引用箇所は、それについての回答のひとつであると感じましたので、以下に引用します。
画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%81-%E8%8D%89-%E7%94%B7-%E4%BA%BA-%E8%AA%AD%E6%9B%B8-%E7%A9%BA-%E3%82%BD%E3%83%AD-1853961/
【この本のポイント!】
2 つき合っている人と読んでいる本でその人が見える
「人生は人との出会いと本との出会いで決まる」という言葉は真実だと思う。
人は出会う人、つき合う人に影響を受け学び、本の言葉と文章で自分を磨き、つくり上げていくからだ。ということは、言い換えるとその人物を見るにはつき合っている人がどんな人か、そしてどんな本を読んでいるかを知ればよいということになる。
まずどんな人とつき合っているか。
年をとっていくことのよいところの一つは、自分に合う人、つき合いたい人がよく見えてきて、そうでない人とつき合わなくてすむということである。逆に自分にそれだけの魅力がなければ、つまらない人しかまわりに残っていないことにもなる。だから若いころから自分を磨いておかなくては淋しい後半生となっていく。
問題は若いときである。若いときこそ志の高い、誠実な人を見出しつき合うように心がけることが重要である。一〇代後半から二〇代前半はつい社会に反抗心を持ちすぎ、悪人に魅力を感じやすいがこれは危険でもある。若者としての正義感がねじてれこうした反抗心に至ることもあるが、不誠実で自分の欲しか考えない志のない人とつき合うとろくなことはない。せっかくの向上できる大切な人生を台無しにしかねないからだ。
勝海舟(かつかいしゅう)という人物がいる。うぬぼれも強い男のようだが、坂本龍馬と西郷隆盛という二大偉人の目を開いてあげたその度量は大したものである。自分を暗殺にきた坂本龍馬に世界に目を向かせ、その後は弟子として大きく育ててあげた。また、西郷にも幕府を改革するなど無駄なことをやめ、新しい日本をつくることを考えようと論したのである。
坂本も西郷も勝を通じて友人となった。二人は勝と出会いつき合うことで、真の英雄としての人生を歩み始めることができたのである。
もちろん二人は勝だけでなく他にも志の高い、誠実な人を選びながら交友を広げていったのである。いかに、どんな人と出会い、つき合うかがその人の人間形成に大きな影響を与えるかがわかるだろう。つき合う人をまちがえれば、竜馬もただの剣の達人で暗殺者として終わっていたかもしれないのである。
次にどんな本を読んでいるのか。
人は言葉と物の見方を本を通じて最も身につける。だから、その人の人物と物の見方は、どんな本を愛読しているかでよくわかる。
たとえば外国のいたずらに難解な翻訳ものとか、大江健三郎のような意味不明の難しい日本語の本をよく読んでいる人は、見せかけの知識人だとわかる。翻訳がまちがっていることも多いし、意味不明の通じない日本語をありがたがっているからである。
テレビで言葉を覚え、物の見方を育てているという人もあろう。それは、受身な人生だけの人である。せっかくのわが人生がもったいない。
ところで、その国の人々がどんな本を読んでいるかは、その国のあり方や国力を左右するのは当たり前であろう。どんな本を読んでいるかの個人の集合体が国だからである。
たとえば、幕末に倒幕、明治維新となっていったのは、徳川家康が広めた学問が日本中のほとんどの人が本を通じて学んだからとも言える。それを受け入れた日本人の読書熱、勉強意欲に世界も驚くのである。
歴史作家の海音寺潮五郎は次のように述べた。
「徳川第一世の家康は天性学問が好きであった上に、戦国乱世のあらあらしい人心を変じて理性的にし、平和な世のするためには、学問が最も効率的であると思案して、学問を奨励した。学問のようなものは、平和な世になれば益々さかんになるものであるから、相まってさかんになった。
当時の学問といえば、いうまでもなく、儒学である。儒学には孔子以来、大義名分の思想がある。この伝統は、江戸時代に日本で最もさかんであった朱子学には最も濃厚であり、とくにその一派の山崎闇斎(やまざきあんさい)の崎門学(きもんがく)ではさらに強烈である。
大義名分とは、絶対善の主体を定めて、これに反するものは悪、これに順(したが)うものは善とすることである。孔子は絶対善の主体を周の王朝とし、朱熹(しゅき)は漢民族による正統な王朝としたが、江戸時代の日本の儒者らは皇室がそれであるとした。これははじめは儒学だけの考え方であったが、中期に国学がおこると、国学者らは国粋的気持から、やはり皇室の絶対尊厳性を主張した。
こうして、幕末に近い頃になると、日本の知識人―武士階級、庄屋、豪農階級、大町人等は、みな尊王思想を持つようになった。尊王思想は、今日考えられるように、特別な人々の特別な思想ではなかったのである」(『西郷隆盛(一)』角川文庫)
今、あなたが何を読んでいるか、日本人が何を多く読んでいるのか、それはとても興味が深いものがあると言えよう。
『自分を磨く読書術』P103~106
画像引用元:https://pixabay.com/ja/%E9%87%91%E9%AB%AA-%E5%A5%B3%E3%81%AE%E5%AD%90-%E8%8D%89-%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%89%E3%82%A2-%E4%BA%BA-%E8%AA%AD%E6%9B%B8-%E7%9F%B3-%E5%A5%B3%E6%80%A7-1866951/
最初に一歩踏み込むかどうかの判断を迫られるのは、たいていは出会って最初の頃です。悩ましいことに、この時はまだ相手の情報の多くは、相手から語られる言葉だけで、情報としては非常に少ないです。
ただ、このような状況でも容易に判断できる場合があります。それは、別の誰かから紹介してもらった時です。この場合、紹介してくれた人が自分にとって親しかったり信頼できる人であれば、相手のことを肯定的に見られるでしょうし、そうでなければ、より慎重になり、一定期間は距離を保とうとします。いずれにせよ、これはあくまでも判断基準のひとつですし、結局は自分なりの判断基準をもたなければなりません。
一方で、自分自身の判断基準だけでは判断材料少なくなりがちですので、本書にかかれているように、その人の周りの人や読んでいる本を知ることは、もう一つ別の判断基準としてとても有用であると感じます。
私自身も、その昔、一歩踏み込んだ後に後悔したことがありました。今思えば、途中でおかしいなと思った時に退くべきでしたが、その時は、どのような人であれ、どのような組織であれ、良いところもあれば悪いところもあるので、できるだけ良いところを見るようにしよう、というどこかの自己啓発本にでも書かれていそうな考えに毒されていて、本質が見えず、そのままズルズルと深みにハマってしまいました。
そのおかしいなと思った時というのは、周りの人たち、つまり、つき合っている人たちが、私にとってあまりガラの良い人間には見えなかったことです。今思えば、本書に書かれている、「その人の周りの人をよく見なさい」ということを痛感させられるような出来事でした。
人間関係で失敗を少なくするために、みなさんにもいろんな判断基準を持つことをオススメします。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E8%87%AA%E5%88%86%E3%82%92%E7%A3%A8%E3%81%8F%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E8%A1%93%E2%80%95%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%A8%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%8C%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8%E8%BC%9D%E3%81%8F-%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E6%AD%A6%E8%94%B5/dp/4479792074
参考図書:『自分を磨く読書術 仕事と人生がもっと輝く!』
発行年月:2007年12月
著者:ハイブロー武蔵(はいぶろー・むさし)
発行所:大和書房
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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