お金がないことはピンチではなくチャンスです!

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第40回

~『修養』(新渡戸稲造)を読んで学んだこと~

 

お金がないことを言い訳にするのは絶対にやめましょう。

 

今の世の中は何をやるにしてもお金がかかります。食事をする場合は外食でお金がかかるのはもちろんですが、自分でつくったからといって節約をするのにも限度があります。その他、生活費として電気ガス水道代はかかりますし、最近ではスマホやパソコンでネットを使うのにもお金もかかります。仕事や旅行で移動する場合もお金がかかりますし、カフェで休憩しながら本を読むのだってタダではありません。本は買わなくとも図書館へ行けばタダで読めますが、そこに行くまでに交通費がかかる場合がほとんどでしょう。いずれにせよ、何かするのにお金がかかるのは、今の世の中に生きている限り仕方がないことです。

ただ、これらのことは、かかる金額としては全体から見ればわずかです。ですので、夢などがあってそれに集中するあまり、一時的にお金がなくてこれらのことが満足にできない状態になることはあるかもしれませんが、最悪、働くことができさえすれば、地道に働くことで、基本的に衣食住や交通費などが主な悩みの種になることは少ないと思います。

 

 
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お金がなくて困る場合、たいていの人は、若いときは勉強、大人になってからは仕事の他に美容や旅行など、後は、年をとってからは健康に関することではないかと思います。そして、こららの中でもお金がない場合の言い訳としてよく使われるのは、特に勉強と仕事の2つだと思います。

お金がないからどこどこの学校へ行けない(あるいは行かせてあげられない)。お金がないから、何々教室で何々を勉強できない(あるいは行かせてあげられない)。お金がないから、これこれのアイデアがあるが実現できない。資金不足で事業を展開できない。などなど。

お金がないことで夢や希望を諦めざるを得ないことは枚挙にいとまがありません。そして、お金持ちやお金持ちの子供を羨ましがって、それと自分の置かれた状況とを比べて悔し涙を流した人もたくさんいるでしょう。

ただ、このような方には、ぜひ、本書の下記引用部分を読んでいただきたいです。

 


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【この本のポイント!】

 

五、学資金なき者の立志

立志に資金なきを歎(たん)ずるなかれ

青年の中には志はあるが、資力がないために、志を立てることができないと憂(うれ)うる者がある。これもまた、よく僕等の耳にするところである。勉強したいけれども、月謝を払う資金がないとか、書籍を購(あがな)うことができぬという者が多い。僕も学生時代には、も少し金があったらと、思うたことが幾度もある。(中略)

学資なき者はかえって幸福

西洋の諺(ことわざ)に「必要は発明の母」(Necessity is the mother of invention.)ということがある。困って必要に迫らるれば、人間は何とかして必要に応ずるだけの工夫をする。工夫すれば、また相当の方法が案出されるものである。金がない、書籍がないといって落胆してしまえば、それまでであるが、この境遇にあっても、いやしくも工夫さえすれば方法はいくらでも立つ。また、そのくらいの工夫をするのが何よりの学問で、学問の進歩は必ずしも順調に乗じて、進む者のみの専有するところでない。苦しみに苦しんで、しかして磨(みが)き出したところに、光も加わり効(こう)も挙(あ)がるのである。
貧困の人に、金持ちになる者が多いとうのもこれがためである。僕は金がないために志を立てられないという人に対しては、金がないのはかえって幸いである、自ら工夫練磨(れんま)する機会を受くるものなりと言いたい。
英仏の学校の相違は、この点に存すると思われる。フランスの学校では物理学の機械などがすべて完備して整頓している。学生はただその形だけを見て、この機械はこうするものである、ああして使うものであると、説明を聞くのみで、完備した機械を実地に使用させない。これに反し、イギリスの学校では機械が完備しておらぬ。生徒を集めて試験を行う時は、鉄線が不足する、ピンが見当たらぬというようなことがある。不足していたからとて試験を中止せぬ、学生は何かこれに代わるものがありはせぬか、と代用物を研究工夫する。完全したものを見るよりも、この不完全なものでも、実際にこれを利用する方が、研究工夫するの力を養い、はるかに学問上の功を挙げ得る。いわゆる過ぎたるはなお及ばざるがごとしで、あまりに完備し、順調にある者は、不十分な逆境の間から磨き上げた者に及ばぬのである。
志を立てるのもまた同じことで、資力の欠乏に打ち克てば、それだけ志を強くする。学資がないからとて、豪も落胆するに及ばぬ。むしろこれを機会として、さらに一段の工夫練磨を積むことを希望したい。
要するに青年が職業なり学問なりを選択するについては、自分の性質に適合するや否やを研究し、適合していたなら、真面目にその適当とする所に従事すべく、耳障りのよいのに迷うことなく、また資力の少ないのに屈せず、一意その目的に向かって邁進する覚悟が必要である。

『修養』P95~98

 


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この引用部分は主に若い人向けに書かれていますが、大人はここで書かれている「勉強」や「学問」を「仕事」に置き換えて読めばよくわかると思います。要は、

お金がないことを言い訳にするな!

ということを新渡戸先生は言っているわけです。これは、たとえば学問に関しては、彼自身は年少の時はお金を出してもらったお蔭で勉強できた半面、自分で稼げる年齢になってからもう一度勉学を志した際には、誰に頼らず自力で賄ったということから、このような考え方になったと思います。

また、お金がない状態で勉強するのはつらいでしょうが、お金がないから学校へ行けないのであれば、まずおお金を稼いでから学校へ行けばいいですし、学費だけが問題であれば、成績が特に優秀であれば学費はいらないという学校はいくらでもあります。

これは仕事でも同じです。資金不足でアイデアを実現できないのであれば、まずはその資金を捻出できるように尽力すればいいだけです。自分で稼ぐことのみならず、誰かに借りたり、投資してもらうことも考えられます。

そもそも、他人からお金を入れてもらえないようなアイデアであれば、アイデアとしてたかが知れていると思います。もっといえば、もし誰かにお金を出してもらうことで事業を進めようとしているのであれば、新しい事業がうまくいくかどうかは未知数の部分も多いので、それがうまくいくかどうかも未知数であり、よって、お金を出してくれる人が理解できていないだけかもしれません。ただ、それでも、お金を出してくれないのであれば、それは、その人自身の評価に問題があると思います。ですので、どうしてもやりたければ、まずは自身を修養することから始める他ありません。また、このように一気にやろうとせずとも、自分で地道に稼いで自己資金でやればいいのです。

今回は話がだいぶ長くなってしまいましたが、いずれにせよ、ここで言わんとしていることは、何事も経験=勉強だということだと思います。そして、それは、下手にお金があると経験できない部分もあるため、そのような人は、お金がなくてゼロから勉強した人には敵わないということです。ですので、お金がないことは、最初は辛いのでしょうが、人生という長いスパンで考えた場合、それ自体はさほどネックにならないからよ。だから希望をもってがんばりなさい!ということを、新渡戸先生はおっしゃりたいのだと思います。

最後に、旧五千円札の肖像であった新渡戸稲造さんが、当時も今も一万円札の肖像である福沢諭吉さんのことについて語っているところがありましたので、以下に引用してこの話を終わりにしたいと思います。

 


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【この本のポイント!】

 

教育事業にしてもそうである。歴代の文相は賢明な者が多かったであろう。しかし、日本文明の教育という点から見れば、福沢諭吉先生が最も多大の力があったと思う。ゆえに実際の仕事をするに、必ずしも大臣にならねばできぬということはない。いやしくも行わんとする精神だにあれば、民間にいてもずいぶんにできる。局長の位地でも立派に行われる。位地または名誉を求めざるも、事を行うには差し支えない。
『修養』P69

 

一介の読書オタクより

 


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参考図書:『修養』
発行年月:2002年7月
著者:新渡戸稲造(にとべ・いなぞう)
発行所:たちばな出版

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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