みなさんはウミヒコとヤマヒコのどちらですか?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第62回

~『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』(藤野英人著)を読んで学んだこと~

 

内向きも外向きもどちらも同じように大切です。

 

最近、ここ10年くらいで日本と中国との関係は劇的に変化しつつあります。特に、2010年に中国のGDPが日本のGDPを超えたなんて大きな話をしなくても、肌感覚として、日本に帰国するたびに日本のいたることころで中国の方々に合う機会が明らかに増えていますし、日本人も仕事や旅行で中国へ行く機会がますます増えています。

私の記憶では、10年くらい前に、どこかの空港で、年間の訪日旅行客を1000万にできるよう頑張りましょう!というような垂れ幕を見たことがあります。その頃は、これまでの伸び率からしても、10年かかってようやく達成できるかどうかというような、かなり高い目標だったようです。

ところが、今では、特に中国人観光客が大勢日本を訪れることもあり、1000万どころか、2000万人も優に超えています。時代というものはよくわからないものです。

このように、多くの中国人が日本へ行き、また、多くの日本人が中国へ行くことで、お互いの偏見が無くなるのは良いことです。私の知る限り、行く前は悪い方に勘違いしている人が多いのですが、行くと逆に偏見で会ったことに気づくといいますか、むしろその反動なのか、好きになってしまう人が多いような気がします。

一方で、上記を含めた中国との関係の変化に戸惑いや不安を覚えている日本人も少なくありません。ただ、歴史的に見ると、日本と中国との関係というのは、交流が増えることでより相乗効果が増すような、良い循環を生み出すような関係であるといえますし、中国が特に経済的に盛り上がってきたことは、むしろ、日本にとって未だかつてない最大のチャンスが訪れているともいえます。自分でも何となくこのように感じておりましたが、本書の下記引用箇所を読んで改めて確信しました。

 


画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E6%B5%B7%E5%B2%B8-%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B4%E7%A4%81-%E5%B2%A9-%E6%B5%B7-%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9-2723729/

 

【この本のポイント!】

 

「ウミヒコ」と「ヤマヒコ」の経済が交互に出現

それでは「海幸彦と山幸彦」の物語から取り出した特徴に照らしながら、日本の経済史を見直してみましょう。日本では歴史に流れるエネルギーがスイングして、「ウミヒコの時代」と「ヤマヒコの時代」が交互に出現します。
そのスイングをもたらすのは外国の影響です。「サーモスタット」という装置があります。ある温度になると、カチッと作動するものですが、歴史の中では外国、特に中国がその役割を果たしていました。外国、特に中国がエネルギーを発散する「過熱状態」になると、あたかもサーモスタットのようにカチッとウミヒコの時代に転換します。
二一世紀に中国が経済的にも政治的にも、強い存在感を増しています。これに日本では、慌てふためいている論調が目立ちます。ですが歴史を見ると、日本人は中国との関係をしたたかに利用して、自分たちの力にしてきました。その後も十九世紀のイギリス、二〇世紀のアメリカなど、覇権国などとの向き合い方が政治、経済に大きな影響を与えました。人々の意識を変えた「儒教」「仏教」「民主主義」などの思想は日本的に変容したものの、もともとは外国から来たのです。島国とはいえ、外国は日本に影響を与えます。(中略)
逆に中国の力が弱まると、日本は「ヤマヒコ」的になります。九世紀末に唐の衰退を理由に、遣唐使が取りやめになりました。その後の平安時代後期には国風文化、貴族文化が栄え、日本は内向きになります。(中略)

 

中国の盛衰に合せてスイング

ここで私の考える「ウミヒコ」と「ヤマヒコ」の特徴を列挙してみましょう。もちろん私は歴史学者ではないので、経済の専門家の観点からどのように経済を見ているかという「物の見方の一つ」と、気楽に受け止めてください。
社会の雰囲気はウミヒコが「OPEN」、ヤマヒコが「CLOSE」という特徴があります。海洋民は、基本的に独立傾向が強いとされます。一方で農耕民はまとまって仕事をする機会が多いため、組織づくりが得意です。そのため「自由」と「平等」という対比があります。昔は中国、そして今はアメリカという国が世界秩序の中心です。そうした覇権国が体現する「グローバリズム」に、私たちはその好悪にかかわらず向き合わなければなりません。ウミヒコは「グローバリズム」、ヤマヒコは「ナショナリズム」を志向します。
土地で見ると、ウミヒコの時代には、西が強くなります。京都や大阪の関西圏、そして博多などの九州圏です。大陸の影響を受けるためでしょう。逆にヤマヒコの時代には、鎌倉、江戸、東京などが強くなりました。
ビジネスでは、大きく分けると、「スプレッド(値ザヤ)」と「チャンス」を狙う方法、そしてコツコツと「ものづくり」「努力」を重ねる方法があります。ウミヒコは前者、ヤマヒコは後者を狙う傾向があります。尊敬される日本企業は、この両方の気質を持っています。(中略)
ここで強調したいのは「ウミヒコ」「ヤマヒコ」のどちらが正しいとか、どちらが存在するべきかという議論を私はするつもりはありません。どちらも大事な特徴です。そして日本の先人たちは歴史の中で、両方の特徴を持ちながら、中国の状況に合わせて上手にスイングしてきました。(後略)

『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』P26~34

 


画像引用元:
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このように考えると、日本という国は、その時代々に力のある国と上手く向き合って、時には戦い、時には仲良くして国を守りそして発展させてきていることがよくわかります。本書には、そこまで詳しく書かれていませんが、時系列順に書くと、日本は昔から、中国、朝鮮、モンゴル、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、アメリカあたりと、時には喧嘩し、特には仲良くしながら今の日本を作り上げてきました。

日本に限らず、国にとって外国というのは常に脅威です。他方で、その恐怖や不安があるからこそ発展するという側面もあります。日本にとってもそれは同じですが、幸か不幸か、日本は周りを海に囲まれた島国です。

つまり、世界では陸続きで他国と隣り合わせになっている国が多い中で、日本は比較的他国の脅威に脅かされる度外が相対的に低くなります。つまり、日本にとって外国というのは、常に、自国を脅かす脅威の存在という側面よりも、自国の発展を促すチャンスをもたらす存在という側面の方が強くなります。

今後、日本と中国の関係がどうなるかわかりませんが、お互いの国が冷静になれさえすれば、両国にとって未だかつてない大チャンスの時代が訪れているとも考えられます。

本書で使われているコトバを借りれば、日本は、戦国時代のウミヒコの時代、江戸時代のヤマヒコの時代、明治維新からのウミヒコの時代、戦後のヤマヒコの時代ときて、21世紀になって、日本は戸惑いながらもウミヒコの時代へなろうとしています。

本書にも書かれていますが、ウミヒコの時代には、日本は西日本が元気になり、また海外と上手く渡り合うことができる個人や組織が強い時代になります。

時代に流されるのはダメですが、時代の流れに逆らってもダメです。みなさんも日本だけにとどまらず、ぜひ世界を相手に活躍してください。これからの時代は、そのような人たちに追い風ですよ!

 

一介の読書オタクより

 


画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%81%AB%E5%BD%B9%E7%AB%8B%E3%81%A4%E3%80%8C%E5%95%86%E5%A3%B2%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2%E3%80%8D%E8%AC%9B%E7%BE%A9-PHP%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E8%97%A4%E9%87%8E-%E8%8B%B1%E4%BA%BA/dp/4569794416/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1509783830&sr=1-1&keywords=%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%81%AB%E5%BD%B9%E7%AB%8B%E3%81%A4%E3%80%8C%E5%95%86%E5%A3%B2%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2%E3%80%8D%E8%AC%9B%E7%BE%A9

 

参考図書:『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』
発行年月:2011年1月
著者:藤野英人(ふじの・ひでと)
発行所:株式会社PHP研究所

※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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