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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第65回
~『一勝九敗』(柳井正著)を読んで学んだこと~
大切なのは、同じ失敗をくり返さないことです。
本書は、皆さんもご存じのユニクロの創業者が書いた本です。この本のタイトルがすべてを物語ってますが、新しい取り組みは、確率論的にいえば失敗して当然なのです。とにかく、どのようなことであれ、失敗をくり返していくうちに、試行錯誤して修正を繰り返すことでようやく答えに辿り着きます。
本書は著者である柳井さんの自伝記のようなもので、ユニクロを個人商店から世界規模の会社にまでどのように成長させてきたかをうかがい知ることができます。彼も会社を上場させ、グローバル企業になるまで育て上げるにあたって、それはそれは数多くの失敗をしてきたのでしょうが、むしろ、成功するには失敗がつきものだというのを本書で繰り返し述べています。「失敗は発明の母」という有名な言葉がありますが、それを地で行なってきたような人です。
そもそも、世の中、何でもやってみなければわかりません。失敗というと一発退場のイメージを受けるかもしれませんが、彼が言う失敗というのはそのようなギャンブルのようなものでなく、会社がつぶれない範囲内で試行錯誤しながら、都度修正しながら仕事を進めましょうということです。ただ、最近では、このような小さなリスクすら取ることができない人が増えてきていると嘆いています。
いずれとしましても、本書を読んで気になったところを以下に引用致します。
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB-%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E9%8A%80%E8%A1%8C-%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E7%9B%A4-%E5%88%A9%E7%9B%8A-%E3%82%AB%E3%82%B8%E3%83%8E-2001033/
【この本のポイント!】
(前略)経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある。商売は失敗がつきものだ。十回新しいことを始めれば九回は失敗する。成功した経営者の中には、もっと凄まじく「百回に一回程度しか成功しない」などとおっしゃる方もいる。「現実」はいつもでも非常に厳しい。経営環境は目覚ましいスピードで変化していく。そのスピードに追いつきながら経営を続け、会社を存続させていくには、常に組織全体の自己革新と成長を続けていかなくてはならない。成長なくして企業としての存続意義はない、と考えている。(後略)
『一勝九敗』P7~8
人材は経営者の手足ではない
いまここに、優秀なワンマン経営者がいるとしよう。売上や利益を上げるために、規模を拡大しようとするとき、彼はどうするか。とにかく手足になる人を採用しようとする。おれが思ったとおり行動してくれればよいと考えてしまう。
会社の成長過程からすると、こんな時期も必要かもしれないが、「手足」は手足のままで満足できないはずだ。その人たちはいやだろうし、ぼくもその立場だったら嫌だ。(中略)
実はぼくにも「手足」だけが必要だと思った時期があった。何でも自分ひとりで考えたほうが、即断即決で早い。競争に打ち勝ち成長するためにはそのほうが合理的と思えたのだ。
それは九一年九月以降、一年に三十店舗ずつオープンさせないと会社がつぶれると思っていた時期だった。それまで社員教育らしいことをしたことがなかったので、研修を専門にしているコンサルタントに一度来てもらい、本部社員向けに研修会をやってもらった。その先生が皆に、「トップダウンでやるよりも、社員一人一人が考えて実行するほうが大事だ。上司に言われたことをやるだけではだめだ」という趣旨のことを話したのを聞き、ぼくは「それは違うでしょう」と言って、その場で喰ってかかってしまった。
やろうと決めたらその瞬間にそのとおり実行されないと、つぶれる。生きるか死ぬかの勝負をしていた時期だったので、ボトムアップをしている時間的な余裕はまったく無かった。彼の指導法は、成長過程を経て安定期に入ったころの企業には有効だったかもしれない。企業には成長のステージごとに最適な教育が必要なのだ。九○年年代前半のユニクロは、一人一人の社員が発想してやっていたら、進路や方向性を失っていたはずだ。トップダウンの体制でなければ、次々と高くなるハードルを乗り越えることは難しかったと思う。
そんな時期を経てきたぼくは、徐々に会社の規模が増大していくのをみて、このままのワンマンな経営スタイルではやがで行き詰ってしまうだろうと考えるようになった。
『一勝九敗』P98~100
(前略)組織が大きくなっていくと、今度は安定を求めるようになる。ぼくは、もともと零細企業から出発しているので、安定を求めるのではなく、不安定さのなかで革新を求めるほうがよいと思っている。
どちらかというと最近は若い人ほど安定的な仕事を求めたがる。第一線よりも管理する人、プレーヤーではなくマネージャーとして評価だけする人、そんなことを志向する人が増えている。仕事を自分がやるよりも、部下や他人にやらせることが管理職の仕事だと錯覚しているのではないだろうか。
お客様の方をしっかり向いて、全員で仕事をしなければいけないのに、管理職が部下の仕事ばかりチェックしているようになると、お客様のことは二に次になり、やがて忘れてしまう。お客様と商品の接する現場の動きがわかっていなければ、的確な指示は出せないはずだ。現場と距離が離れれば離れるほど、仕事のための仕事をわざわざ作り出す危険性もある。こんなことではいけない。
人数が少なく会社規模が小さなときであれば、ぼくが一喝すれば軌道修正できたが、人数が増えるとそうはいかない。掛け声だけに終わってしまう。
『一勝九敗』P197
画像引用元:
https://pixabay.com/ja/%E3%83%81%E3%83%83%E3%83%97-%E5%86%8D%E7%94%9F-%E7%81%AB%E3%81%8B%E3%81%8D%E6%A3%92-%E3%82%AB%E3%82%B8%E3%83%8E-%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB-%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E7%94%A8%E3%81%AE%E3%83%81%E3%83%83%E3%83%97-2038348/
知人の社長は、その人が口に出して言ったことを、実際にちゃんとやるかどうかを見ると言います。冒頭でも述べましたが、人がやることのほとんどは失敗しますので、この社長からすれば、相手が口に出してやると言ったことを、その人が本当に実行しているとすれば、その相手は自分が言ったことの大半は失敗しているということになります。ただ、彼は、相手が実際にやったことが成功したか失敗したかどうかは気にしていないように感じますし、トライ&エラーは必然だと思っているようです。
この社長が見ているのは、その人が成功したか失敗したかどうかではなく、実際にやったかどうかです。つまり、口では大きなことを言っても実際に実施するのが少ない人は、たとえたまに実行して成功したとしても、評価が低いということになります。
私の考えでは、多くの人が言ったことをやらないのは、失敗して恥をかくのが怖いからで、つまり、プライドが高いからだと思います。本当のプライドというのはそういうものではないと思いますが、間違ったプライドを持っている人が多いような気がします。
話を戻しますが、一方で、経験が豊富な人が聞いたら、直ぐに失敗するとわかるようなことであっても、それを実際にやって失敗し、さらに別のことを言ってまた失敗しても、彼からすれば、評価が下がらないどころか、コイツはバカ(頭が悪いという意味ではなく、経験が浅かったり、あまり難しく考えないという意味で)だが、言ったことはちゃんとやる。とプラスの評価になっているフシがあります。
そもそも、たいていの場合は、失敗をずっと繰り返すことなどできません。成功し続けることが難しいように、変な言い方ですが、「失敗」するということを成功し続けることは困難です。失敗をすることで必ず学ぶことがありますし、自分では思いもよらないニーズを掘り起こしてしまうこともあるでしょう。このようなことは、机の上に座っているだけでは気づくことはなく、現場で直にお客様と触れ合って、そして、いろんな人と会って話してはじめて、これらの気づきを得ることができます。
今回の引用箇所で印象的なのは、管理を志向する人が増えてきているということです。これも、自分でやって失敗し、恥をかくことが嫌だと思う人が増えてきている証拠でしょう。
読書オタクはこれまで様々な失敗をしてきていますが、これも変な言い方ですが、失敗することを繰り返すと失敗することに慣れてきます。もちろん、そのまま一生失敗し続けることはあまり良いこととはいえませんが、失敗しても続けることで、どのようなことでも続けていれば必ず答えを見つけることができるということを学びました。
みなさんも、成長はしたいけれども失敗することが怖ければ、まずは小さなトライ&エラーから始めてみませんか?慣れれば安定を志向するよりもずっと面白いですよ。
一介の読書オタクより
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%80%E5%8B%9D%E4%B9%9D%E6%95%97-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%9F%B3%E4%BA%95-%E6%AD%A3/dp/4101284512/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1511607295&sr=1-1&keywords=%E4%B8%80%E5%8B%9D%E4%B9%9D%E6%95%97+%E6%9F%B3%E4%BA%95%E6%AD%A3
参考図書:『一勝九敗』
発行年月:2006年4月
著者:柳井正(やない・ただし)
発行所:新潮社.
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。
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